忍者ブログ
大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
[2]  [3]  [4]  [5]  [6]  [7]  [8]  [9]  [10]  [11]  [12
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

明石の歩道橋事故(平成13年、花火の見物客が死亡)で、神戸の検察審査会が、検察が不起訴処分としていた当時の明石署の副所長を「起訴すべきだ」と議決し、業務上過失致死罪で強制的に起訴され、刑事裁判が開かれることとなりました。
 
検察審査会とは、なじみが薄いですが、簡単に言えば裁判員制度に似ています。
といってもこちらは昭和20年代からある制度で、国民から無作為に選ばれた11人の委員で構成され、起訴されるべき事件であるのに検察が起訴しなかったとき、起訴すべきだと議決して申し入れる。
 
起訴する・しないを決めることができるのは、検察官だけです。そして検察官が適切な起訴を行っているかを審査するのが検察審査会の役目なのです。検察といえども主権者である国民の監督下に置かれるという建前です。
ちなみに裁判員制度と同じで、検察審査会のほうも、突然通知が来るのだそうです。
 
しかし、ごく最近までは、検察審査会の議決には何の強制力もなかった。検察審査会が「起訴すべきだ」と申し入れても、検察は「ああそうですか」と聞くだけで良かった。
ところが、近年の検察審査会法の改正で、その議決に強制力が与えられることになった(その要件や手続きの詳細は省略)。裁判員制度と同じく、司法改革の一環として、一層の国民参加が図られたのです。
 
検察が「起訴しない」と言っている事件を強制的に起訴するとして、誰がその刑事裁判を担当するのかというと、弁護士です。
今回の事件では、兵庫県弁護士会の推薦に基づき、裁判所が検察役の弁護士を選任することになるでしょう。
 
少し話変わって、弁護士が刑事事件で検察官役を務めるという制度は、実は昔から存在しています。
刑事訴訟法には「準起訴手続」というものがあり、公務員が国民の人権を侵害した場合(たとえば警官の暴行事件など)、検察官は役人同士の仲間意識から、その犯人を起訴しないことがある。その場合、被害者の申立てを裁判所が認めた場合に、刑事裁判が開かれるというものです。
 
調べてみますと、戦後現在の刑事訴訟法ができてから、現在までの間に、17件の準起訴手続が行われたようです(田口守一「刑事訴訟法」。平成17年までのデータです)。
 
このように、弁護士による刑事裁判は、戦後60年以上経った今も、全国の裁判所で17件しか行われていないので、弁護士会としてもノウハウが蓄積されていないでしょう。
ですから今回のようなケースでは、刑事事件に相当強い弁護士が選ばれ、検察側も資料をきちんと引き継ぎするなどして協力することが求められます。
 
ただ、刑事事件に強い弁護士と言っても、元検察官の弁護士(いわゆるヤメ検)だと、古巣である検察が起訴しないと言っている事件にどこまで本気で取り組んでくれるかという疑念が生じますし、かと言ってバリバリの刑事弁護のすご腕の人だと、検察とはいつも対立しているわけだから、検察がきちんと協力してくれるかといった心配もあります。
 
新制度の下、不安な部分もありますが、この裁判の進行には注目したいと思います。
PR
小沢さんが東京地検に容疑者扱いされていることに触れました。
そういう扱いとなった理由として、一部の報道では、ある市民団体が小沢さんを政治資金規正法違反で「告発」し、地検がそれを受理したためである、という解説がされていました。
 
「告発」とは何かというと、「告訴」とセットで覚えておいてください。
いずれも、他人の犯罪行為を捜査機関(警察・検察)に申告し、裁判にかけて裁いてくださいと申し出ることを言います。
告訴と告発の違いは、告訴は、その犯罪の被害者本人が行うものを言い、告発は、犯罪とは直接関係のない第三者が行う場合を言います。
 
今回の市民団体(どんな団体かは知りませんが)は、小沢さんが裏献金を受け取っても実害を受けるわけではないのですが、こんな犯罪は放っておけないから裁いてくださいと申し出たわけで、「告発」にあたります。
 
では、告訴や告発があれば、それをされた人は直ちに容疑者(被疑者)になるのか、というと、そんなことはありません。
ここでも何度か触れたとおり、人が容疑者として扱われるようになるのは、捜査機関が「こいつは犯罪をやっているな」と疑いをかけた時点です。告訴や告発がなくても、容疑が高ければ、警察や検察自ら捜査に乗り出します。
 
告訴や告発をすることの意味は、捜査開始のきっかけを与えるという点にあります。
それを受理した警察・検察は、その事件を捜査した上で、裁判にかけるか否かを判断しないといけない。つまり、告訴・告発を受理すると、警察や検察の仕事が増えることを意味します。
 
だから、所轄の警察署に告訴状を持っていっても、たいてい、警察官は何やかやと言って受理せずに、告訴状をつき返してきます。
 
たとえば、お金を貸したのに返してくれない人を「詐欺罪だ」と告訴しようとする人はたまにいますが、その程度のことであれば警察はまず受理しません。最初からお金をだまし取るつもりだったという証拠でもないと詐欺罪にできないので、こういうケースは「民事崩れ」の告訴と言って警察官は嫌がります。
 
だから今回、検察が直々に市民団体の告発状を受理したというのは、よくよくのことなのです。
 
結論としては、検察が小沢さんを容疑者扱いしているのは、告発があったからそうなったのではありません。むしろ順序が逆で、もともと容疑が高いと思っていたから、告発状を受理したのです。
 
なお当ブログでは、少し前は小沢一郎幹事長のことを小沢と呼び捨てにしていましたが(理由は顔が憎たらしいため)、最近は「小沢さん」と改めさせていただきました(理由は追いつめられてちょっとかわいそうになったため)。
東京地検による小沢さんの事情聴取について触れます。
注目すべき点は、新聞やテレビでも報道されているとおりですが、検事が小沢さんに「黙秘権」があると伝えていることです。
 
黙秘権というのは簡単にいえば「言いたくないことは言わなくてよい」という権利なのですが、実はこれはものすごい特権なのです。
 
たとえば、皆さん方のように犯罪とは無縁の生活を送っている人でも、事件の目撃者になった場合は、「証人」として裁判所に呼ばれる可能性があります。
 
このとき、「いっさい関わりたくないから証言しません」と言って通用するかというと、そうはなりません。証人として呼ばれたら、公正な裁判の実現のために協力して証言するのが義務とされており、理由もなく法廷に出なかったり、法廷に出てもダンマリを決め込んだりすると、「10万円以下の過料」という、罰金の一種が科せられます(民事訴訟法192条、刑事訴訟法160条など)。
 
ただ例外的に、「それを話すと自分やその親族が犯罪責任を問われかねない」ような事柄に関することは証言しないことができるし、また、私たち弁護士や医師など、人のプライバシーに関わる仕事をしている者であれば、「依頼者の秘密」を理由に証言拒否できる。
 
このように、証人になった場合は原則として、何でも正直に話さねばならず、証言拒否権が認められるのは極めて限定的な場合に限られます。
 
黙秘権は、これとは全然違います。自分に有利なことも不利なことも、一切言わなくていい。質問に対し、ずっと黙っていてもいい。黙っておくことについて理由も要らない。それによって罰を受けることもない。
 
こんな特権が認められる人々は、世の中に2種類しかいません。被告人と被疑者です。
ご存じのとおり、被告人は刑事裁判を受けている人を言い、被疑者は、マスコミでは容疑者と呼ばれますが、犯罪の疑いをかけられている人です。
これらの人は、裁判所や検察から追及されているという弱い立場にあるため、憲法や刑事訴訟法により、一般の国民には認められない特権が与えられているのです。
 
今回、東京地検は小沢さんに「あなたには黙秘権があります」と告知したそうですが、これは検察が小沢さんに「うちではあなたを容疑者として扱っています」と言ったのと全く同じ意味です。
 
新聞は遠慮して「小沢容疑者」という表現を使っていませんが、法的にいえば小沢さんは明らかに被疑者、容疑者なのです(のりピー報道に関しても似たような話をしました。こちら)。
 
検察が小沢さんを容疑者として扱った理由については、「告発」が受理されたからだ、とも説明されていますが、このことの意味については次回に続く。
 
昨年末に書いた「メッセンジャー」の黒田の暴行事件、黒田が釈放されました。
暴行を受けたとされるガールズバーの店長と示談が成立したこともあり、検察は黒田を「不起訴」つまり刑事裁判にかけないことにしたようです。
 
私は、メッセンジャーのファンというわけではないですが、土曜日の昼間にメッセンジャーがやっているラジオ番組がけっこう好きで、土曜出勤した際には事務所でよく聞いているので、個人的には早く復帰してほしいと思います。
 
でも今回の事件で吉本興業は、黒田を当分の間、謹慎処分とするとか。
不起訴という結果は、深夜の公園で全裸になった草なぎクンと同じです。草なぎクンはその後すぐに芸能活動に復帰しましたが、もし黒田の謹慎が長引くようであれば、「世の中、『顔』の違いで扱いも異なるのだ」と理解しておきましょう。
 
それにしてもこの暴行事件の事実関係は、未だによくわかりません。
 
暴行のきっかけは、25万円の請求に黒田が怒ったこととされていますが、この請求は妥当だったのか。
店側は「ドンペリ」(高級シャンパン)を何本か開けたと説明しており、とすれば、この金額はやむをえないでしょう。私も経験しましたが、北新地のそれなりのクラブで同じことをすれば、100万円を超えることもありますので(なお、経験したと言っても払ったのは私ではありません)。
 
一方、サントリー角瓶のハイボールを何杯か飲んでいただけ、という証言もあるようで、だとすると25万円の請求はぼったくりであり、暴行事件のきっかけを作った店側の落ち度も否定できないことになる。
 
さらに、殴られた店長のケガの程度が、当初は顔面骨折で全治2か月の重症、と報道されていたのが、実は顔のケガは以前からあったもので、今回の暴行でのケガはせいぜい2週間程度とか。店長が、ケガの程度についてウソを警察に申告していたとすれば、なお悪質ということになります。
 
では、黒田が逆に、この店長の責任を追及することはできないのか。
もしこの店長が、黒田を告訴していた(正式に告訴状を提出し、裁判にかけることを求めていた)場合は、虚偽告訴罪(刑法172条、10年以下の懲役)にあたる可能性もある。
おそらくそこまではしていないと思うので、警察の事情聴取にウソを言うだけなら、犯罪にはあたりません。
 
それでも、黒田が17日間も留置場に勾留されたのは、重傷の容疑がかかったことが理由の一つであるのは間違いなく、したがって黒田は民事上、ウソの申告で不当に長く勾留されたことについて、店長に対し慰謝料の支払いを求めることは可能と思われます。
 
もっとも、示談が成立しているということは、今後この事件については「お互いに言いっこなし」という合意が成立しているので、実際に店長が責任追及されることにはならないでしょう。
 
被害者側も相当に怪しげなケースでしたが、そんな相手であっても、少しでも手を出してしまえば相応の制裁を受けるのだ、ということを教えてくれる事件でした。
大阪の漫才コンビ・メッセンジャーの黒田が傷害容疑で逮捕されました。
宗右衛門町のガールズ・バーで友人と飲んでて約25万円を請求されたのがきっかけだと報道されています。
 
殴られた店長は顔面骨折の重傷で、それほどの殴打をしたのが黒田か友人かは分かりませんが、両方とも手を出していたのであれば「共同正犯」であり、顔面骨折の責任(傷害罪)は両者に及びます。
 
当初黒田は、横にいた友人が突然手を出したと供述していたようですが、本当にそうなら黒田には暴行の意思も行動もなかったので、共同正犯の責任は負いません。もっとも、現場で「やってしまえ」って感じで目で合図をしたとか、そういった意思疎通が図られた場合は、共同正犯となることもあります。
 
かように、ちょっとしたはずみで、結果すべてに責任を負わされてしまうというのが、共同正犯の怖いところです。これでもし店長が死んでしまうと、傷害致死の責任を負います。
 
こんなことにならないためには、こういう場面では手も出さない、手を出すそぶりも見せない、というのがよいのです。というより、そもそも、お酒を飲むときには、わけのわからないお店に行くべきではない。
 
ただ、もし仮に、飲みに行った先で、25万円も請求されたらどうすべきか。
お金を持っているのであれば、支払ってさっさと出ましょう。その上で、二度とその店には行かない、ということでよいと思います。
 
ボラれた、という思いが払拭できないのであれば、警察に通報に行くか、または後日、その店あてに内容証明郵便でも送付して、「25万円の請求は不当利得だからカネ返せ」とでも通告してやればよいでしょう。
 
では、手持ちのお金で支払えない場合はどうすればよいか。その場合は、「そこまで高額になるとは思っていなかったので持ち合わせがない、支払えないので、無銭飲食の詐欺で警察につき出してほしい」とでも言っておけばよいのではないか、と思います。
 
ぼったくりバーであれば、警察沙汰になってはむしろ困る。もし警察につき出されても、最初から料金を踏み倒すつもりではなく、請求が予想外に高額なために払えないというだけなら、詐欺の故意が認められないため、犯罪にはなりません。
東京あたりでは過去に実際あったようですが、こういうときにキャッシュカードを渡して預けるとか、そういう要求はのんではいけません。
 
不当な要求に対しては、穏やかに聞き流しつつ、出るところへ出ましょう、という対処がよいのだと思います。相手の要求どおりにしてもダメだし、かといって相手に激昂してみせるのは、その場ではカッコいいかも知れませんが、今回の黒田のようなことになってしまうおそれが大きいです。
 
なお、私自身は、飲みに行くときには馴染みのお店しか行きませんので、今回のようなことにはならないと思っています。ここで書いた対処法でうまくいくかどうか、私は実証する機会がないと思いますので、どなたか機会があればやってみてください。あくまで自己責任で、ということでお願いします。
鳩山首相が、自身の政治献金問題について、偽装献金への関与を否定する「上申書」を、東京地検に提出したそうです。私自身、よくわからない話ですが、解説を試みます。
 
上申書とは何かというと、国家機関に何らかの連絡や報告をする際に出す文書のことです。私も、担当している裁判について裁判所に事務連絡をする際に、上申書を提出することがあります。
(もっとも、上申書とは字の通り、「上に申しあげるための書面」を意味し、「国家=お上」という意識に基づくネーミングであって、私はあまり好きではありません)
 
鳩山首相の「上申書」の内容は、故人名義での献金や、母からの数億円の贈与について、首相自身は「関与していない」という趣旨であったそうです。
よくわからない部分は多くありますが、とりあえず以下2点に触れておきます。
 
まず、犯罪への関与が疑われている人、世間ではこれを「容疑者」と言いますが、容疑者に対して検察が事情聴取しようというときに、「上申書」だけ出せば取調べに応じなくてもよいなどという話は、一般的にはありえない。
 
さらに不可解なのは、上申書の内容について鳩山首相が「憶測を呼ぶから何も話さない」と言っている点です。
「関与していない」というのであれば、それを堂々と話せばよいのです。いや、首相という立場にある以上、国民の政治への信頼を損なわないように、話す義務があるというべきです。
 
話さない、というのなら、話さないことを前提にこっちで憶測するのも勝手だと思うので、以下、私の憶測です。
 
鳩山首相は、偽装献金や贈与税の脱税に、関与しています。
検察としては、首相を逮捕することで国政に混乱をきたすことはさすがに気が引けるが、しかし、首相が「私はやってない」と言い張ると、検察のメンツにかけても逮捕せざるをえない。
 
とはいえ検察官も役人ですから、首相は法務大臣を通じて、検事総長に対し、逮捕させないよう圧力をかけることもできる(検察庁法14条、「指揮権の発動」)。
 
そこで検察は、上申書の提出という特例で済ませることにした。
その際、「やったことを認めてくれるなら、逮捕もしないし、その内容は明らかにしない」と首相に約束し、首相のメンツを保つとともに、首相に「貸し」を作った。
 
だから、検察へ提出した上申書は、「関与した」という内容になっているはずです。
 
いきなり話が小さくなりますが、私自身、司法修習生として大阪地検にいたとき、こそ泥や痴漢を取り調べる経験をしており、その際、やったことを認めて供述調書にサインしてくれるなら、逮捕も起訴もせずに穏便に済ませたいのだけど、やってないというのなら裁判に持ち込んでハッキリさせざるをえない、という状況が何度かありました。
 
今回は、そういうことが国家規模で行われたのだな、と勝手に憶測しています。
米兵の子供の少年たちが道路にロープを張って、バイクで通行していた女性が転倒し大ケガした事件で、警視庁は4人の少年を逮捕したとか。
 
この事件、米側が一時少年の身柄引渡しを拒否したという、国際法的、政治的な問題も含んでいますが、ここでは、少年たちのしたことが本当に殺人未遂にあたるのか否かという点について、純粋な法解釈の問題として述べてみます。
 
殺人未遂とは、他人に対する殺意を持って、人を殺害する行為を行ったが、結果として人が死ななかった状態を言います。
 
車の往来する公道にロープを張るなんて、常識ある人が見ればきっと「そんなことして人様が死んだらどうするのっ!」と怒るであろう危険な行為であり、少年たちだって、そんなことくらいわかっていた。
しかし、だからといってこれが殺人未遂にあたるかというと、疑問を感じます。
 
私が知っている実例では、こんなケースがあります。
とあるマンションの高層階に住んでいる男性(成人)が、気分がムシャクシャして、隣家の屋根に大きな石を投げ落とした。石は民家の屋根を突き破り、その床まで落ちた。
幸い、屋根の下に人はおらず、ケガ人はいなかったのですが、警察はこの男性を殺人未遂罪で逮捕した。
 
しかしその後、検察はこの事案を単なる「建造物損壊罪」で起訴しました。担当の検事は、「殺意」や「殺害行為」まで認められないと考えたのでしょう。
 
何を持って刑法上の殺意や殺害行為と捉えるかという議論までは触れませんが、少なくとも、殺人罪や殺人未遂罪の責任を問うためには、「そんなことして人様が死んだらどうするの」という程度の行為では足りず、もう少し明確で具体的な生命への危険を要すると解されます。
 
では、冒頭のような行為は、どのように裁かれるべきか。
本件は少年法が適用されますから、成人のケースとは異なってきますが、これが成人なら、往来危険罪(刑法124条、2年以下の懲役)と傷害罪(204条、15年以下の懲役)を適用して、上限で懲役15年まで科することができるので、それなりに重い処罰ができる。
 
一方、殺人未遂だと、適用される条文は殺人罪(199条、203条)で、いちばん重くて死刑。「未遂」というのは「軽くしてやっても良い」というだけなので(43条)、当然軽くなるわけではない。本件は冷静に考えて、死刑を含めて検討すべきほどの事案であるとは思えません。
 
米兵の子供らのしたことは、間違いなく悪質な行為であり、個人的感想としては「やはりヤンキーはアホ」と私も思うのですが、だからと言って「殺人」の解釈を緩やかにすることを認めてしまうと、いずれは私たちにそれが跳ね返ってきます。
たとえば、皆さんが車を運転中にエンストして、仕方なくその場に車を止める行為だって、殺人未遂になりかねないのです。
 
この事件を、検察はどう扱うかは知りませんが、私の解釈では、殺人未遂ではなく、往来危険罪プラス傷害罪でよいと考えています。

リンゼイ・アン・ホーカーさんの死体遺棄容疑で逮捕されていた市橋容疑者が、今度はリンゼイさんに対する「殺人、強姦致死」の容疑で再逮捕されたと報道がありました。

「再逮捕」というと、逮捕されていた人がいったん逃亡して、再び身柄確保されたというイメージを持つ人もいますが(以前、ある作家も週刊誌でそう言ってた)、

これは、死体遺棄容疑で逮捕(72時間)・勾留(20日間)できる期限が切れたので、殺人・強姦致死のほうでも引き続き捕まえておいてよい、というお墨付きが裁判所から出たことを意味し、市橋は別に逃亡したわけではありません。
 
複数の犯罪の容疑がある場合は、証拠の上で明らかなほう(通常は軽いほうの罪)でまず逮捕しておいて、その期間中に別罪(重いほうの罪)の証拠を固めておいて、再逮捕するというのが警察の常套手段です。
 
で、今回の逮捕容疑なのですが、違和感を持った方はおられないでしょうか。
「殺人」と、「強姦致死」です。
 
この事件の被害者はリンゼイさん1人です。市橋は、抵抗されたら殺してもよいと思いつつ、リンゼイさんを犯し、そして殺害した、と疑われている。
犯した末に死に至らしめたのであれば、「強姦致死」のみでよいのではないか。
 
これは、強姦致死について定める刑法181条1項が、刑罰として「無期または3年以上の懲役」と定めていることに原因があります。つまり、死刑を選択できないのです。どんな悪質なケースでも、最も重くて無期懲役にとどまる。
 
だから、それにプラスして、殺人の条文(199条)も重ねて適用する。殺人罪には死刑も定められているからです。
 
となると、別の疑問も生じます。
だったら、「殺人」と、「強姦」を重ねて適用すればいいのではないか。
「殺人」と「強姦致死」だと、何だか1人の女性を「2回」殺しているような形になる。
 
これにも、いちおう理由はあるのですが…細かくなる上に、面白い話でもないので、割愛します。こういう話が面白いと感じた方は、司法試験に向いているかも知れません。
 
リンゼイさんのご冥福を祈ります。
お知らせ
一時的に戻ってきました。 左上に「裏入口」という小窓が出てくるかも知れませんが、当ブログとは関係ありません。おそらくアダルトサイトへの入口なので、クリックしないでください。
現在の来訪者数
ブログ内検索
アクセス解析
忍者ブログ [PR]