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移転先の不具合があって、一時的にこちらに戻ってきたりしていて、ややこしくてすみませんが、現在、最新記事は下記のサイトで更新中です(平成27年9月現在)。
http://www.yama-nori.com/blog/
よろしくお願いします。
三代以上続いている大阪市民である私としては嘆かわしい限りですが、大阪市が先日、裁判所からまた賠償命令を受けました。
橋下市長が音頭をとって、市職員に対して労働組合活動や政治活動に関わっているか否かをアンケート調査したのは、個人のプライバシーや労働者の団結権を侵害し違法であるとして、約40万円の賠償金を原告の職員に支払うよう命ぜられました(1月21日)。
この判決は当然の内容であって、特に論評をしようとも思いません。
たいていの人は、職場で、社内の規律強化のためとか言って、支持政党はどこかとか、特定の労働組合と関わっているかなどと聞かれ、回答拒否は処分すると言われたら、そんなもの答える義務があるのか、と感じるでしょう。
橋下市長は就任当初から一貫して、大阪市では労働組合が「のさばっていて」市政を停滞させているなどと大っぴらに述べており、そのため、いくつかの判決で「不当労働行為」(労働者や労働組合を弱体化させる行為)の意図があったと指摘されています。
橋下市長の、労働組合に対する敵意むき出しの発言は、市職員側の弁護士からすればまさに「思うツボ」であり、こんな市長だから市職員に対する嫌がらせのためだけにアンケートを実施したのだ、との主張を展開したことでしょう。
市長も弁護士、そのブレーンにも多数の弁護士がいるはずなのに、このやり方のマズさには驚くばかりです。
市長側は一部の市職員が勤務時間中に労働組合活動をしていた(つまりさぼっていた)、だからその実態調査をする必要があったと主張したようです。しかし判決は「そんな証拠は出されていない」と言ったそうです。
この点、産経22日朝刊によると、「市側が抽象的な少数事例しか法廷に持ち込まなかったために考慮できなかったとも推測できる」と指摘されています。
つまり、大阪市では労働組合がのさばっているというのが橋下市長の見解ですが、では具体的に、市職員が仕事をさぼって違法な組合活動をしていたケースはどれだけあったのか、と聞かれると、これといったケースはなかったということです。
この点は確かにそうです。大阪市民であれば「大阪市では昔から労働組合が強い」といった話を何となく聞いた方も多いと思いますが、では「市職員が実際に仕事をサボって組合活動をしていた」という話を具体的に挙げることのできる方はどれだけおられるでしょうか。橋下市長がこの点をヤイヤイ言うようになってからも、具体例は思い浮かびません。
地下鉄職員が構内でタバコを吸っていたとか、河川局の人が清掃中に拾った金品を着服したとかいう話は聞きますが、これは個々の職員が処分されるのは当然としても、労働組合活動とは全く関係ありません。
ですから、労働組合がのさばっているから市政が停滞しているというのは、公務員ぎらいの一部世論と、それにかつがれた橋下市長の「イメージ」でしかない。私も正確に実態を見て知っているわけではないですが、少なくとも今回の裁判で、市はそのような証拠を全く出せなかったのです。
結局、具体的な検証なく、印象だけで押し切ってしまおうとしたのが、今回のアンケートの顛末だったのです。そしてそれはまた、大阪都構想、つまり、大阪府と大阪市が二重にあるのは無駄っぽいから大阪市を解体してしまえ、という話にも結び付いているように思えます。
かねてから書こうと思っていた、ろくでなし子氏の一件について触れます。
漫画家のろくでなし子という女性が、逮捕され起訴されました。
起訴された内容は、自身の性器の3Dプリンタ用データを配信した行為が「わいせつ電磁的記録頒布罪」(刑法175条、2年以下の懲役または250万円以下の罰金)にあたるとされたものです。
刑法175条は、わいせつな文書や図画などを、頒布したり、公然と陳列したり、販売目的で所持することを禁じています。
近年の改正で、図画などの物に限らず、電子データも規制の対象となりました。
これは当然のことです。いまやインターネットを通じてわいせつな画像をばらまくことは容易で、インターネット回線を通じて「データ」を送り、送信先のパソコンやスマホの画面でわいせつ画像や映像を再生させることが可能です。
データそのものやパソコンの画面自体は文書でも図画でもないので、データつまり電磁的記録を規制対象とする必要があります。そうしなければ、インターネットでわいせつ画像をばらまく行為が全く規制できなくなります。
ろくでなし子氏の行為は、自分の性器のデータを頒布した、ということです。
頒布とは、無料で配ることを言います。インターネットを通じて、欲しい人にそのデータを送っていたということであれば、当然「頒布」に該当します。
あとは、女性器の模造品が「わいせつ」なものに該当するか否かの問題になります。ろくでなし子氏は「私の体はわいせつではない」と主張しているとのことですが、単純に考えて性器の模造品はわいせつなものであると考えざるを得ないと思われます。
データ配信を受けた人が、そのデータを3Dプリンタにかければ、女性器をかたどった物体ができあがるというわけです。電磁的記録も規制対象であるという現行法に則る以上、これはわいせつな電磁的記録を頒布したということで、処罰対象になると解するほかありません。
一部の論者は、この問題を、表現の自由との兼ね合いや、女性の性に対する抑圧などと絡めて問題視しています。もっとも警察・検察は、ろくでなし子氏の作品(漫画やオブジェなど)をすべてケシカランと言っているわけではありません。
あくまで、女性器そのものの形を容易に再現できるようなデータを配信した、という行為を起訴したわけです。女性だからというわけではなく、男性が自分の陰部のデータをばらまいたとしても、もちろん逮捕・起訴されるでしょう。
ろくでなし子氏だって、「私の体はわいせつではない」と言いながらも、あの人が普段から自分の性器を露出して歩いていたかというと、そんな話は聞いたことがありません。それはなぜかというと、誰にとっても(ろくでなし子氏自身にとっても)、性器などは大っぴらに見せるものではないという社会通念が共有されていたからです。
そういった社会通念を逸脱した行為を処罰するのがわいせつ関係の罪です(もちろん、社会通念という目に見えないものを理由に処罰することについての異論もありますが、それはわいせつ罪の制度そのものに関わる議論になるので、ここでは立ち入りません)。
そういうことで、私は、弁護士としては少数派かも知れませんが、ろくでなし子氏の行為は処罰されて然るべきものだと考えます。
先日お伝えしましたとおり、当事務所ホームページ付属の本体ブログ(http://www.yama-nori.com/)が不具合のようですので、当面、記事掲載等については、旧ブログであるこちらに移ります。
復旧後、また本体ブログに復帰しますので、その際はここで改めて告知いたします。しばらくの間、よろしくお願いします。
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
この「忍ブログ」への投稿は久しぶりです。
現在、メインで利用しているブログと事務所ホームページが技術的な理由で閲覧できない状態のようであるため、告知や記事掲載は当面、この場でさせていただこうと思います。
しばらくの間、こちらをご覧ください。
移転先は、http://www.yama-nori.com/blog/ です。
ここしばらく、この忍ブログと併行して記事を更新してきましたが、最近は、参照されたり引用されたりする度合いが、上記の新ブログのほうが多いように思いますので、そろそろ完全に切り替えたいと思うようになりました。
初代・楽天ブログと、二代目・忍ブログで、それぞれ2年半程度つづけてまいりました。過去からの読者の方には、三代目となりますが、ご了承いただき、引き続きお付き合いください。
あと、この忍ブログでは、「近況」欄の息子の写真を楽しみにしてくださっている方が結構おられて、人によっては本文は読まずにそっちだけ見ているような方もおられまして、それはそれで嬉しいことでした。
もっとも、新しいブログでは、まだブログの体裁をいじって使いこなすまでには至っていないので、近況欄をどのような形で継続していくかは、今後考えたいと思います。
ひとまず、今後、このブログの更新は停止する予定です。そのまま閲覧できる状態で置いておくつもりですので、引き続き、参照、引用など、ご自由に利用いただければと思います。
ではまた、新しいブログでお会いしましょう。
バイバイ(息子より)。
最高裁で無罪判決が出た強姦事件の真相は、判決を読むかぎり、被告人の男性が、被害者とされた女性に、3万円を払う約束で「手で抜いてもらった」だけのようです。
男性が3万円を支払わずに逃走したことから、ややこしくなった。
ではこの男性、3万円を払う約束を破ったことについて、刑事責任は問われないのか。
刑法の教科書などには、売春代金を支払わなかったら犯罪になるか、ということが論じられています。本件も同じ問題であると考えてよい。
たとえば飲食店で食事したあと、「財布を忘れたから取ってきます」と言ってそのまま逃げると詐欺罪になるし、「こんなマズイ料理でこの俺からカネを取るのか!」などと凄んで食事代を踏み倒すと恐喝罪になる。
売春代金についても、同じように詐欺罪や恐喝罪になる、という考え方もありますが、一方で、売春でお金を稼ごうなどと考える女性側も間違っているから、男性側に刑罰まで与える必要はない、という考え方も有力です。
最高裁はどう言っているかというと、こういうケースについての判例はないようです。おそらく、そんな事例は滅多に刑事裁判にならないからだと思われます。
もし女性が、「やらせてあげたのに代金を払ってくれなかった」と言って警察に駆け込んだとしても、警察はまともに取り合わないでしょう。せいぜい、その男性を呼び出して注意し、女性にも「そんな商売やめなさい」と諭して終わり、となることが多いでしょう。
今回の事件も、女性が「強姦された」と被害届を出したから刑事裁判に発展したのであって、「手で抜いてあげたのに3万円払ってくれなかった」と申告していたら、ここまで大ごとにはならなかったはずです。
そういった、有罪・無罪が微妙である点に加えて、強姦の裁判で無罪判決が出ているため、「ならば詐欺罪か恐喝罪で」と改めて起訴されることもないでしょう。
「一事不再理」の原則で、いったん無罪になった事件を蒸し返すことはできないということです。
(このケースで詐欺・恐喝罪での再起訴に一事不再理が適用されるかどうかには議論の余地があると思いますが、専門的になりすぎるので省略します。刑事訴訟法を学んでいる方は、公訴事実の同一性の範囲に入るか否か、考えてみてください)
逆に、この事件を「強姦」と届け出た女性には、虚偽告訴罪(犯罪でないものを犯罪と申告すると罪になる)が成立しないのか、ということも問題となると思います。
理論上は、そうなると言えそうです。
もっとも、今回の被告人男性が虚偽告訴罪で女性を逆に告訴したとしても、元はと言えば手で抜いてもらおうなどとしたのが間違いじゃないか、身から出た錆じゃないか、ということで、警察官に諭されて終わりなのではないかな、と思います。
つまらない事件が偉大な法原則を生む、と何かの教科書で読んだ記憶がありますが、今回も、つまらない事件が注目すべき最高裁判決を生んだ、そんな事件だったという感想です。
終わり。
痴漢事件では最近、無罪判決が増えつつあり、強姦事件でも今回、最高裁で無罪判決が出ました。これまで、無実なのに見過ごされて有罪とされた事件も、おそらく皆無ではないでしょう。
この手の事件で冤罪が生じやすい理由は、客観的な証拠が乏しいことや、目撃者が少ないために被害者の証言が決め手になってしまう点にあります。
被害者は、自分が刑事裁判に巻き込まれ、法廷で証言するのも恥ずかしいことであるのに、あえてウソの被害申告をするはずもない、だから被害者の証言は信用してよい。一方、容疑者や被告人は、自分が有利になるよう弁解するのが常であるから、その証言は疑ってかかる必要がある。これが従来の傾向だったと思います。
前回書いたとおり、大多数のケースでは、その考え方でよいのです。ただ、その一般論が妥当しないケースも少数ながら存在する。
記憶に新しいところでは、2年前、大阪の地下鉄の車内で、女性が乗り合わせた男性客を痴漢として訴え、その男性客が一時、身柄拘束されるという事件がありました。女性は示談金をあてにしてその男性をゆするつもりだったのです。
これは、背後にその女性の友人の男子大学生(後に虚偽告訴罪で実刑)がいて、計画的に行なわれたという、かなり特異なケースであったといえます。
しかし、被害者の証言には時としてウソが混じること、そして、真実であれウソであれ、女性の「このひと痴漢です」の一言で男性は簡単に逮捕されてしまうことを、この事件は明らかにしました。この事件ではたまたま早い段階で真実が露呈したとはいえ、たいていのケースでは長い身柄拘束となり、痴漢と言われた男性は社会的に抹殺されてしまう。
ですから、被害者の証言を重視することは当然であるとしても、それを偏重することはあってはならない。それは刑事訴訟法の教科書にも出てくるような基本的なことなのですが、これまでは軽んじられてきたのです。
今回の無罪判決が出た事件に話を戻しますが、前回書いたとおり、被告人の男性が当初から言っていたのは、「3万円払うからと言って手で抜いてもらった」ということです。しかし男性は3万円を払わず逃走した。
最高裁の判決には明確には触れられていませんが、判事の頭の中には「3万円を払ってくれなかった腹いせで強姦と訴えたのかも知れない」ということがあったでしょう。
そういう点でも、被害者の証言はよくよく吟味される必要があった。今回の最高裁のスタンスは妥当であったと思います。
さて、ではこの被告人、強姦ではないとしても、3万円を払わなかったことについては何の責めも負わなくてよいのか。その点は次回に検討します。