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三代以上続いている大阪市民である私としては嘆かわしい限りですが、大阪市が先日、裁判所からまた賠償命令を受けました。
橋下市長が音頭をとって、市職員に対して労働組合活動や政治活動に関わっているか否かをアンケート調査したのは、個人のプライバシーや労働者の団結権を侵害し違法であるとして、約40万円の賠償金を原告の職員に支払うよう命ぜられました(1月21日)。
この判決は当然の内容であって、特に論評をしようとも思いません。
たいていの人は、職場で、社内の規律強化のためとか言って、支持政党はどこかとか、特定の労働組合と関わっているかなどと聞かれ、回答拒否は処分すると言われたら、そんなもの答える義務があるのか、と感じるでしょう。
橋下市長は就任当初から一貫して、大阪市では労働組合が「のさばっていて」市政を停滞させているなどと大っぴらに述べており、そのため、いくつかの判決で「不当労働行為」(労働者や労働組合を弱体化させる行為)の意図があったと指摘されています。
橋下市長の、労働組合に対する敵意むき出しの発言は、市職員側の弁護士からすればまさに「思うツボ」であり、こんな市長だから市職員に対する嫌がらせのためだけにアンケートを実施したのだ、との主張を展開したことでしょう。
市長も弁護士、そのブレーンにも多数の弁護士がいるはずなのに、このやり方のマズさには驚くばかりです。
市長側は一部の市職員が勤務時間中に労働組合活動をしていた(つまりさぼっていた)、だからその実態調査をする必要があったと主張したようです。しかし判決は「そんな証拠は出されていない」と言ったそうです。
この点、産経22日朝刊によると、「市側が抽象的な少数事例しか法廷に持ち込まなかったために考慮できなかったとも推測できる」と指摘されています。
つまり、大阪市では労働組合がのさばっているというのが橋下市長の見解ですが、では具体的に、市職員が仕事をさぼって違法な組合活動をしていたケースはどれだけあったのか、と聞かれると、これといったケースはなかったということです。
この点は確かにそうです。大阪市民であれば「大阪市では昔から労働組合が強い」といった話を何となく聞いた方も多いと思いますが、では「市職員が実際に仕事をサボって組合活動をしていた」という話を具体的に挙げることのできる方はどれだけおられるでしょうか。橋下市長がこの点をヤイヤイ言うようになってからも、具体例は思い浮かびません。
地下鉄職員が構内でタバコを吸っていたとか、河川局の人が清掃中に拾った金品を着服したとかいう話は聞きますが、これは個々の職員が処分されるのは当然としても、労働組合活動とは全く関係ありません。
ですから、労働組合がのさばっているから市政が停滞しているというのは、公務員ぎらいの一部世論と、それにかつがれた橋下市長の「イメージ」でしかない。私も正確に実態を見て知っているわけではないですが、少なくとも今回の裁判で、市はそのような証拠を全く出せなかったのです。
結局、具体的な検証なく、印象だけで押し切ってしまおうとしたのが、今回のアンケートの顛末だったのです。そしてそれはまた、大阪都構想、つまり、大阪府と大阪市が二重にあるのは無駄っぽいから大阪市を解体してしまえ、という話にも結び付いているように思えます。