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大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
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裁判員法の施行が近づいてきて、先週末には、裁判員候補者に対する通知が最高裁から発送されたとか。

旧ブログにも書きましたが、弁護士は裁判員に指名されないため、私の同業者には通知は届きません。
(裁判員法15条1項には、裁判員になれない職業の人が列挙されています。裁判員法の条文はこちらを参照)

ではなぜ、弁護士は裁判員になれないのか。
「それは弁護士が職業がら、どんな事件でも『無罪だ』と言うからだろう」
と思う方もおられるかも知れませんが、そうではありません(たぶん)。

弁護士は、司法研修所で、弁護士になるための教育だけでなく、裁判官や検察官になるための教育もいちおう受けている。だから、もし裁判官になって判決を書けと言われたら、そこそこのものは書ける。

しかし裁判員に求められているのはそういうことではない。刑事事件のことに精通したセミプロみたいな人が欲しいのではなく、むしろそういう知識や経験が全くない「素人」の感覚や常識を求めているのです。

それが、弁護士が裁判員から除外される理由の一つだと思いますが、さらにもう一つの重大な理由があります(たぶん)。

それは、「弁護士は毎日たくさんの法廷での仕事を抱えていて、とうてい裁判員などやっていられない」ということでしょう。

仮に私が裁判員になれと言われれば、面白そうだから喜んで応じるでしょう。裁判員として呼び出された日に、すでに他の民事や刑事の法廷のスケジュールが入っていたら、その部署に連絡して、キャンセルして延期してもらう。

たまに仕事をブッキングさせてしまって「こんどの法廷を延期してくれ」とお願いしても、裁判所の人はいい顔をしませんが、「裁判員に呼ばれたから」と言えば、文句なしに応じざるをえない。裁判員制度は裁判所のトップである最高裁が推し進めているからです。
しかし全国の弁護士がそんなことをやりだすと、全国で裁判の進行に支障が生じます。

ということで、裁判所に混乱を生じるのを防ぐというのが、弁護士が裁判員になれない最たる理由でしょう。

人員を借り出される一般企業に対しては、「仕事が忙しいのは拒否理由にならない」と、職場の混乱は自助努力で回避することを求める一方、裁判所という職場は混乱させたくないとの意図が見えます。

裁判員法15条1項をさらに眺めてみると、裁判官自身や裁判所職員もまた裁判員になれないとあり、これも根本的にはそういう意図から来ているのでしょう(たぶん)。
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舞鶴女子殺害事件について、もう少しだけ。

家宅捜索が先週末から始まり、今日もまた引き続き行なわれるらしい。
捜索の結果、自転車が出てきたとか(防犯カメラに映っていたものかどうかは不明)、情報は小出しにされていますが、凶器などの物証は出たのか、肝心なところは明らかにされていません。
(これは当然のことで、警察としては手持ちのカードを最初から公表しないといけない義務はありませんので)

最も注目すべきは、弁護士が家宅捜索に立ち会ったということです。
捜索をしてよいかどうかは、前回も書いたとおり、裁判官が令状を出すかどうかチェックしますが、弁護士に立ち合わせないといけない決まりはない。
私自身、刑事事件を受け持った際、家宅捜索に立ち会った経験はありません。

捜査の段階での行為(逮捕、勾留、取調べ、捜索、押収など)は、裁判官の許可のもとで警察・検察が行なうことで、弁護側は基本的に口出しできないし(準抗告という手はあるけどほとんど認められないのは前回のとおり)、立会いもできない。

それでも、あえてこの捜索に弁護士を立ち会わせたのは、京都府警がよほど「公明正大にやっています」ということをアピールしたいためであって、裏を返せばそれだけ「実はちょっと問題がなくもない」ということを京都府警自身がよくよくわかっているのでしょう。

見込み捜査の疑いも強いのですが、それでも、こういうケースがきっかけとなって、「問題となる余地を含む場合は弁護士を立ち会わせる」という慣行ができれば、捜査の行き過ぎを防ぐことができるかも知れません。

しかし、何日間もかかりきりで家宅捜索に立ち会わないといけない(その間、他の仕事ができない)というのは、一弁護士にとっては正直なところ大きな負担ではあります。

この事件には引き続き注目していきたいとは思いますがひとまずここまで。

前回の続き。
舞鶴の女子殺害事件で、60歳の男性の弁護士が、家宅捜索に対して準抗告をした。

「準抗告」というのは、裁判官の判断に対する異議申立てのことだと思ってください。
たとえば、被告人が有罪判決を下された場合、それに不服なら、高等裁判所に「控訴」したり、最高裁に「上告」したりすることができる。そういうものの一種です。

「抗告」って何だとか、なぜ準優勝みたいに「準」がついているのかとか、きちんと意味はあるのですが、長くなりますし、聞いても面白くない話なので省略します。

準抗告は刑事訴訟法という法律に定めがあり(429条)、
一番よく行なわれるのは、逮捕された容疑者にさらに10日間の「勾留」を裁判官が認めたときに、それに対して不服を申し出るというものです。
でも実際には、弁護側が準抗告をしたところで、棄却されて認められないことが大半です。

今回の事件ではどうだったか。
準抗告が出たということで、京都府警は捜索を取りやめにした。
法律上は、弁護士の準抗告が出たからと言って、すでに家宅捜索の令状が裁判官から出ているわけだから、取りやめにしないといけない決まりはない。

だからこれはたぶん、京都府警が慎重を期したのだと思います。弁護士の準抗告を押し切ってまで家宅捜索をして、それで何も証拠が出てこなかったら大失態のそしりを免れなくなることを恐れたのでしょう。

その後になって、弁護士からの準抗告は棄却されて、改めて裁判官から警察に家宅捜索の「お墨付き」が与えられました。

弁護士が争ったことは最終的にはハネられたわけですが、
結果的には、一弁護士のやった準抗告が、警察に慎重な捜査を促すきっかけとなったわけです。

私自身、弁護士として8年間、それなりに刑事弁護をやってきまして、「準抗告はやってもムダ」と思ってしまいがちだったのですが、改めてこの準抗告の重みを認識しました。
とはいえ私もこの事件に関してはヤジ馬なので、家宅捜索から何が出てくるのかはちょっと楽しみにしています。
京都・舞鶴の女子高生殺害事件で、発覚から約半年を経て新展開。

容疑がかかっている60歳の男性宅に家宅捜索(いわゆる「ガサ入れ」)が入ろうとしていたところに、その男の弁護人が「準抗告」をしたために捜索が延期されたと、昨日の夕刊に出ていました。
捜索現場を取材しようと張り付いていた報道陣には肩すかしであり、その京都の弁護士に「何すんねん」と思ったかも知れません。

この事件、いま何が問題になっているかについて書きたいと思います。

この60歳男性は、女子殺害とは全く関係のない窃盗事件(賽銭泥棒)で逮捕されており、それについてはすでに起訴されて刑事裁判が始まっている。小室哲哉みたいに保釈されていなくて、今でも拘置所か警察署で勾留されています。

しかしこの、賽銭泥棒で逮捕したというのが、すでに「別件逮捕」であるニオイがする。
つまり、最初から女子殺害(殺人罪)の容疑で睨んでいたが、証拠もないから裁判官は逮捕状を出さない。そこで、容疑の固まっている賽銭泥棒(窃盗罪)という「別件」で逮捕しておいて、「お前、殺しもやってるやろ」と追及し、口を割らせようというわけです。

このような「見込み捜査」に基づく別件逮捕は違法とされています。
もっとも、これは容疑者・弁護人側の論理であり、警察側はきっと、「賽銭泥棒はれっきとした犯罪だから逮捕したのだ。その過程でたまたま殺しの疑いが浮上しただけだ」と言うでしょう。

しかしこのような手法がまかり通るなら、冤罪による逮捕が頻発します。
皆さんだって、たとえば駐車違反か何かで突然逮捕されて、「何でそんなことで」と思っていたら、取調室の密室で身に覚えのない殺人事件をあげられ、「犯人はお前やろ」と追及される可能性があるとすると、恐ろしいことでしょう。

これが違法な別件逮捕か否かはともかく、いずれにせよこの男性には殺人罪の逮捕状は出ていない。そこで容疑を固めるために、先に家宅捜索をして、証拠品を差し押さえようというわけです。

捜索するにも裁判官の「捜索・差押令状」が必要です。
裁判官が、それくらいは認めてもよかろうということで、その令状を出した。
それに対して、弁護人が異議申立てをした。それが今回の「準抗告」なのです。

と、準抗告のことで書こうと思っているうちに前置きが長くなったので、次回に続く。
「ブログ版 南堀江法律事務所」は、こちらへ移転しました。

旧ブログはこちら

所定のパターン(テンプレートというのですか)を使わずに、配色なども自分で設定した(というか適当にいじっていたらこうなった)ので、体裁は素人っぽい感じがしますが、徐々に手を加えていきたいと思います。

ちなみに「忍者ブログ」を選んだのは、使いやすさ云々より、ショー・コスギの忍者映画が好きという理由によるのですが(つまり名称だけで選んだ)、

楽天ブログのときにはできなかった(できるかも知れないけどやり方を知らなかった)、
念願の、字を大きくしたり、オークションとか要らんコーナーを載せなくしたりすることができるようになりました。

まだまだ使い勝手は未知数の部分もあるのですが、当分、こちらのほうでブログを進行させていきたいと思います。

すでにテスト的に過去いくつかの記事を載せましたが、これは旧・楽天ブログの際のものと同じです。
新しい記事はこれから書いていきます。

引き続き、よろしくお願いいたします。
今回の話はあくまで軽い雑談としてお読みください。

麻生総理が、「医者には社会的常識のない人が多い」と発言した。
その趣旨や文脈はともかく(親族が地方で病院を経営していて、病院経営の大変さを言ったものらしいのですが)、一般論として「医者は非常識だ」と言ったととられても仕方がない。

医師会は、私が思っていた以上の猛反発をしました。日本医師会の会長が、首相官邸に乗り込んで抗議したとか。
私は最初に麻生総理のこの発言を聞いたとき、医師会なら笑い飛ばすかな、とも思っていたのです。

たとえば、私たち弁護士の業界に関していうと、社会的常識のない人の割合が確かに多い。
それはどうしてかと言うと、一昔前の司法試験が異常に難しくて、それに受かることができるのは、よほどの秀才か、社会的常識を身につける機会がないくらいに勉強した人だけだったからです。

法律という専門的知識を身につけたから、その世界では生きていけるけど、それ以外の世界では通用しないであろう人も多い(例 横柄である、他人の話をきちんと聞けない、書面の締切りを守らない、客の金を横領する、脱税して国外逃亡する、つまらないブログを日々書いている等々)。

医師の世界も、似たような部分があるように思う。弁護士や医師に限らず、プロの世界は、ある程度そういうものだと思います。
そういう世界の人々は、社会的常識ではなく、自身の専門的知識や職能を頼みにしていきている。だから、個人レベルでは「常識がない」と言われても、「だから何だ?」と笑い飛ばすことができる。

ですから、今回の医師会の猛反発、これはまさに「政治」なのだろうなと思います。

すなわち、一国の総理が、医師一般を非難したかのような発言をした以上、医師の利益団体でもある医師会としては抗議せざるをえない。そういう世論ができてしまうと、今後、医師の利益や立場に配慮しない法律や制度ができてしまうことになりかねない。

そしてもう一つ。
最近マスコミが指摘する「産科医のたらい回し問題」などのように、医師が批判されることも多い。
今回の医師会会長の抗議は、そういう風潮に対する、「権力者やマスコミが現場の医師を不用意に批判するなら医師会が黙っていないぞ」という意思表明も含まれているのでしょう。

医師に対する批判を封ずる意図であれば、ちょっと恐ろしい思いがするのですが、同時に、医師会という利益団体の政治力に感心せざるをえません。
同時に、政界や財界と共同歩調を取ることが多い日本弁護士連合会のトップの姿勢と比べてみても、そのことを強く感じた次第です。
小室哲哉が保釈されて大阪拘置所から出てきました。保釈保証金の金額は3000万円だそうです。
この保釈と保証金について書きます。

何らかの犯罪の容疑で逮捕され、その後、取調べの必要があると判断された場合は、「勾留」(こうりゅう)されることになる。期間は10日間ですが、1回は延長がきくので、たいていの場合は20日間は勾留される。

20日間の取調べを経て、検事が刑事裁判に持ち込もうと判断すると、その事件を起訴することになります。
起訴されるとだいたい1か月後くらいに刑事裁判が始まるのですが、取調べはいちおう終了しているので、もはやその被告人を勾留しておく必要はなくなる。

そこで、「後日の裁判の際にはきちんと法廷に来てくださいよ」という条件のもとに、被告人を出してあげるのが保釈です。
ただ、保釈してそのまま逃亡されると困るので、お金を出させて、「逃げたら没収しますよ」ということで裁判所がいったん預かる。それが保釈保証金です。

きちんと裁判を受ければ返してくれるのですが、いったんは現金で預けないといけないので、お金がないと保釈もしてもらえない、というわけです。

小室哲哉の場合はその金額が3000万円とされました。
最近の有名なところでは、村上ファンドの村上は5億円、ライブドアの堀江は3億円だったかと記憶しています。

この金額はどうやって決まるかというと、簡単に言えば、事件の大きさと、逃亡の可能性と、その人の財力で決まることになります。
もっと具体的にいうと、保釈するか否かを判断する裁判官と、その被告人の弁護士との「交渉」で決まります。

私はさすがに、何千万とか億単位の保証金を納めたことはありません。一般的な刑事事件なら、200万円前後ではないかと思います。

担当の裁判官と、面談または電話で話して、
裁判官「保釈金はどれくらい用意できそうですか」
弁護士「本人も決して裕福ではありませんので、何とか100万円くらいで…」
というふうに値切ることもよくあります。

お金がなくて詐欺を行なった小室哲哉ですから、保釈保証金なんて準備できないのではないかと思っていたのですが、どこかから用意してきたのでしょう。

それにしても、5億円という巨額を騙し取ったという事件の大きさからすると、3000万円という保釈保証金は正直「安いな」と私は思ったのですが、きっと弁護士が相当に値切ったのだろうなと思います。そして小室哲哉も一時のことを思えば経済的に相当苦しいのだろうなと想像しています。
厚生労働省の元事務次官を狙ったと思われる死傷事件が起こりました。
犯人と、その動機についてはまだ未解明の部分もありますが、おぞましく、そして憎むべき事件です。

厚生行政に恨みがある人の犯行であるのかどうかは知りません。
厚生労働省と旧厚生省の政策については、最近の年金問題や薬害問題その他、諸々の批判があるのも事実でしょう。
しかし、そのことと、人を殺すことは全く別問題です。

今日(19日)、夜のニュースで「街の人の声」というのがいくつか流れていましたが、
「ここまでの事態にしてしまった政治の責任は重いと思う」
という趣旨の発言をする人が複数いて、私個人としてはとても嫌な気持ちになりました。

厚生労働省のお役人のやることだから「政治」部門の問題でなくて「行政」部門の話だろうとか、そういう些細なことはどうでもよい。
卑劣な犯罪が起こったときに、それを安易に社会や政治のせいにしてしまう考え方が恐ろしいです。

かつて当ブログでも取り上げたかと思いますが、私が筑波大学在学中に、イスラム学の学者で「悪魔の詩」(マホメットを冒涜しているとされた書物)を翻訳した五十嵐一助教授が学内で殺害されました。
そのニュースに接したいわゆる「文化人」がテレビで
「イスラムに対する理解が足りなかったのではないか」
と言ってしたり顔をしているのと同じような嫌な感じを受けます。

法治国家であるこの日本においては、どんな理由であれ、暴力で言論を封ずるとか、気に入らぬ政治・行政に暴力で報いるとか、そういうことがあってはならないのです。
まだまだわからないことが多いこの事件ですが、そのことを改めて強く感じました。
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