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大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
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かねてから書こうと思っていた、ろくでなし子氏の一件について触れます。


漫画家のろくでなし子という女性が、逮捕され起訴されました。


起訴された内容は、自身の性器の3Dプリンタ用データを配信した行為が「わいせつ電磁的記録頒布罪」(刑法175条、2年以下の懲役または250万円以下の罰金)にあたるとされたものです。 


刑法175条は、わいせつな文書や図画などを、頒布したり、公然と陳列したり、販売目的で所持することを禁じています。


近年の改正で、図画などの物に限らず、電子データも規制の対象となりました。


これは当然のことです。いまやインターネットを通じてわいせつな画像をばらまくことは容易で、インターネット回線を通じて「データ」を送り、送信先のパソコンやスマホの画面でわいせつ画像や映像を再生させることが可能です。


データそのものやパソコンの画面自体は文書でも図画でもないので、データつまり電磁的記録を規制対象とする必要があります。そうしなければ、インターネットでわいせつ画像をばらまく行為が全く規制できなくなります。


ろくでなし子氏の行為は、自分の性器のデータを頒布した、ということです。


頒布とは、無料で配ることを言います。インターネットを通じて、欲しい人にそのデータを送っていたということであれば、当然「頒布」に該当します。


あとは、女性器の模造品が「わいせつ」なものに該当するか否かの問題になります。ろくでなし子氏は「私の体はわいせつではない」と主張しているとのことですが、単純に考えて性器の模造品はわいせつなものであると考えざるを得ないと思われます。


データ配信を受けた人が、そのデータを3Dプリンタにかければ、女性器をかたどった物体ができあがるというわけです。電磁的記録も規制対象であるという現行法に則る以上、これはわいせつな電磁的記録を頒布したということで、処罰対象になると解するほかありません。


一部の論者は、この問題を、表現の自由との兼ね合いや、女性の性に対する抑圧などと絡めて問題視しています。もっとも警察・検察は、ろくでなし子氏の作品(漫画やオブジェなど)をすべてケシカランと言っているわけではありません。


あくまで、女性器そのものの形を容易に再現できるようなデータを配信した、という行為を起訴したわけです。女性だからというわけではなく、男性が自分の陰部のデータをばらまいたとしても、もちろん逮捕・起訴されるでしょう。


ろくでなし子氏だって、「私の体はわいせつではない」と言いながらも、あの人が普段から自分の性器を露出して歩いていたかというと、そんな話は聞いたことがありません。それはなぜかというと、誰にとっても(ろくでなし子氏自身にとっても)、性器などは大っぴらに見せるものではないという社会通念が共有されていたからです。


そういった社会通念を逸脱した行為を処罰するのがわいせつ関係の罪です(もちろん、社会通念という目に見えないものを理由に処罰することについての異論もありますが、それはわいせつ罪の制度そのものに関わる議論になるので、ここでは立ち入りません)。


そういうことで、私は、弁護士としては少数派かも知れませんが、ろくでなし子氏の行為は処罰されて然るべきものだと考えます。

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