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大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
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明日26日は宇都宮地裁で、足利事件の再審判決が出るようです。
 
ご存じのとおり、この事件は、足利市での幼女殺害につき、無実の菅家さんが無期懲役判決を受けて17年間服役した後、DNA鑑定の誤りが指摘されて釈放されたという、異例の経過をたどったケースでした。
明日の判決では、有罪判決は誤りで、菅家さんは無罪である、ということが言い渡される見込みです。
 
一部マスコミの論調を見ますと、無罪と言い渡すだけでは足りないのであって、なぜそのような誤判がなされたのか、その経緯と理由にまで踏み込んで解明すべきだ、といった主張も見られます。
 
しかし、再審はあくまで、過去に行われた裁判が間違っていたのか否かを明らかにするための制度です。間違いが起こった理由は何かといったことを解明することは、もちろん非常に重要なことではあるけれど、再審制度にそれを求めるのは無理がある。
 
ここでも少し前に、裁判所(特に最高裁)は、いわゆる「傍論」(結論に関係のない部分)で余計なことをしゃべるために、それが時に国政に混乱をもたらすといったことを書きました。
今回の再審判決でも、一地方の裁判所の担当裁判官が、菅家さんは有罪か無罪かといった事柄を超えて、警察・検察の捜査や司法制度のどこに誤りがあるのか、その原因は何なのかといったことを語りだしたら、これは明らかに越権行為であると思われます。
 
加えて、足利事件の判決はなぜ誤ったのか、それを明らかにすることは、必ずしも菅家さんのためにもならないように思われます。
 
今、手元に刑事訴訟法の教科書(田口守一「刑事訴訟法」(弘文堂))を置いてこれを書いています。DNA鑑定について論じた部分で、足利事件その他のDNA鑑定が採用された判例を挙げた上で、こう書かれています。
 
「これらの事例はDNA鑑定以外にも有力な証拠が存在する事案であり、DNA鑑定は補助証拠としてのみ使用されている」。そしてDNA鑑定だけで犯人を認定してよいかは今後の課題である、と。
 
結果的に誤判であったとはいえ、菅家さんが犯人にされたのは、DNA鑑定が間違っていたというだけでなく、他にも「有力な証拠」があったということになります。
 
なぜ誤判が生じたかを明らかにするのであれば、その「有力な証拠」の中身も公にし、その上で、誤判はDNA鑑定のせいなのか、他の有力な証拠のせいなのかを検証しないといけない。しかし、いま、それを蒸し返すことが良いことなのか、私には疑問に思えます。
 
菅家さんの名誉の回復は、再審という単に手続的なことの中で図られるのでなく、今後の講演などの啓蒙活動によって果たされるのがふさわしいと思っています。
明日26日の再審判決は、淡々と「無罪」を宣告して終わるべきでしょう。
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