忍者ブログ
大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
[1]  [2]  [3]  [4]  [5]  [6
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

三代以上続いている大阪市民である私としては嘆かわしい限りですが、大阪市が先日、裁判所からまた賠償命令を受けました。

橋下市長が音頭をとって、市職員に対して労働組合活動や政治活動に関わっているか否かをアンケート調査したのは、個人のプライバシーや労働者の団結権を侵害し違法であるとして、約40万円の賠償金を原告の職員に支払うよう命ぜられました(1月21日)。



この判決は当然の内容であって、特に論評をしようとも思いません。
たいていの人は、職場で、社内の規律強化のためとか言って、支持政党はどこかとか、特定の労働組合と関わっているかなどと聞かれ、回答拒否は処分すると言われたら、そんなもの答える義務があるのか、と感じるでしょう。 


橋下市長は就任当初から一貫して、大阪市では労働組合が「のさばっていて」市政を停滞させているなどと大っぴらに述べており、そのため、いくつかの判決で「不当労働行為」(労働者や労働組合を弱体化させる行為)の意図があったと指摘されています。

橋下市長の、労働組合に対する敵意むき出しの発言は、市職員側の弁護士からすればまさに「思うツボ」であり、こんな市長だから市職員に対する嫌がらせのためだけにアンケートを実施したのだ、との主張を展開したことでしょう。

市長も弁護士、そのブレーンにも多数の弁護士がいるはずなのに、このやり方のマズさには驚くばかりです。


市長側は一部の市職員が勤務時間中に労働組合活動をしていた(つまりさぼっていた)、だからその実態調査をする必要があったと主張したようです。しかし判決は「そんな証拠は出されていない」と言ったそうです。

この点、産経22日朝刊によると、「市側が抽象的な少数事例しか法廷に持ち込まなかったために考慮できなかったとも推測できる」と指摘されています。

つまり、大阪市では労働組合がのさばっているというのが橋下市長の見解ですが、では具体的に、市職員が仕事をさぼって違法な組合活動をしていたケースはどれだけあったのか、と聞かれると、これといったケースはなかったということです。

この点は確かにそうです。大阪市民であれば「大阪市では昔から労働組合が強い」といった話を何となく聞いた方も多いと思いますが、では「市職員が実際に仕事をサボって組合活動をしていた」という話を具体的に挙げることのできる方はどれだけおられるでしょうか。橋下市長がこの点をヤイヤイ言うようになってからも、具体例は思い浮かびません。

地下鉄職員が構内でタバコを吸っていたとか、河川局の人が清掃中に拾った金品を着服したとかいう話は聞きますが、これは個々の職員が処分されるのは当然としても、労働組合活動とは全く関係ありません。

ですから、労働組合がのさばっているから市政が停滞しているというのは、公務員ぎらいの一部世論と、それにかつがれた橋下市長の「イメージ」でしかない。私も正確に実態を見て知っているわけではないですが、少なくとも今回の裁判で、市はそのような証拠を全く出せなかったのです。


結局、具体的な検証なく、印象だけで押し切ってしまおうとしたのが、今回のアンケートの顛末だったのです。そしてそれはまた、大阪都構想、つまり、大阪府と大阪市が二重にあるのは無駄っぽいから大阪市を解体してしまえ、という話にも結び付いているように思えます。


PR

かねてから書こうと思っていた、ろくでなし子氏の一件について触れます。


漫画家のろくでなし子という女性が、逮捕され起訴されました。


起訴された内容は、自身の性器の3Dプリンタ用データを配信した行為が「わいせつ電磁的記録頒布罪」(刑法175条、2年以下の懲役または250万円以下の罰金)にあたるとされたものです。 


刑法175条は、わいせつな文書や図画などを、頒布したり、公然と陳列したり、販売目的で所持することを禁じています。


近年の改正で、図画などの物に限らず、電子データも規制の対象となりました。


これは当然のことです。いまやインターネットを通じてわいせつな画像をばらまくことは容易で、インターネット回線を通じて「データ」を送り、送信先のパソコンやスマホの画面でわいせつ画像や映像を再生させることが可能です。


データそのものやパソコンの画面自体は文書でも図画でもないので、データつまり電磁的記録を規制対象とする必要があります。そうしなければ、インターネットでわいせつ画像をばらまく行為が全く規制できなくなります。


ろくでなし子氏の行為は、自分の性器のデータを頒布した、ということです。


頒布とは、無料で配ることを言います。インターネットを通じて、欲しい人にそのデータを送っていたということであれば、当然「頒布」に該当します。


あとは、女性器の模造品が「わいせつ」なものに該当するか否かの問題になります。ろくでなし子氏は「私の体はわいせつではない」と主張しているとのことですが、単純に考えて性器の模造品はわいせつなものであると考えざるを得ないと思われます。


データ配信を受けた人が、そのデータを3Dプリンタにかければ、女性器をかたどった物体ができあがるというわけです。電磁的記録も規制対象であるという現行法に則る以上、これはわいせつな電磁的記録を頒布したということで、処罰対象になると解するほかありません。


一部の論者は、この問題を、表現の自由との兼ね合いや、女性の性に対する抑圧などと絡めて問題視しています。もっとも警察・検察は、ろくでなし子氏の作品(漫画やオブジェなど)をすべてケシカランと言っているわけではありません。


あくまで、女性器そのものの形を容易に再現できるようなデータを配信した、という行為を起訴したわけです。女性だからというわけではなく、男性が自分の陰部のデータをばらまいたとしても、もちろん逮捕・起訴されるでしょう。


ろくでなし子氏だって、「私の体はわいせつではない」と言いながらも、あの人が普段から自分の性器を露出して歩いていたかというと、そんな話は聞いたことがありません。それはなぜかというと、誰にとっても(ろくでなし子氏自身にとっても)、性器などは大っぴらに見せるものではないという社会通念が共有されていたからです。


そういった社会通念を逸脱した行為を処罰するのがわいせつ関係の罪です(もちろん、社会通念という目に見えないものを理由に処罰することについての異論もありますが、それはわいせつ罪の制度そのものに関わる議論になるので、ここでは立ち入りません)。


そういうことで、私は、弁護士としては少数派かも知れませんが、ろくでなし子氏の行為は処罰されて然るべきものだと考えます。

続き。
最高裁で無罪判決が出た強姦事件の真相は、判決を読むかぎり、被告人の男性が、被害者とされた女性に、3万円を払う約束で「手で抜いてもらった」だけのようです。
男性が3万円を支払わずに逃走したことから、ややこしくなった。

ではこの男性、3万円を払う約束を破ったことについて、刑事責任は問われないのか。
刑法の教科書などには、売春代金を支払わなかったら犯罪になるか、ということが論じられています。本件も同じ問題であると考えてよい。

たとえば飲食店で食事したあと、「財布を忘れたから取ってきます」と言ってそのまま逃げると詐欺罪になるし、「こんなマズイ料理でこの俺からカネを取るのか!」などと凄んで食事代を踏み倒すと恐喝罪になる。

売春代金についても、同じように詐欺罪や恐喝罪になる、という考え方もありますが、一方で、売春でお金を稼ごうなどと考える女性側も間違っているから、男性側に刑罰まで与える必要はない、という考え方も有力です。

最高裁はどう言っているかというと、こういうケースについての判例はないようです。おそらく、そんな事例は滅多に刑事裁判にならないからだと思われます。

もし女性が、「やらせてあげたのに代金を払ってくれなかった」と言って警察に駆け込んだとしても、警察はまともに取り合わないでしょう。せいぜい、その男性を呼び出して注意し、女性にも「そんな商売やめなさい」と諭して終わり、となることが多いでしょう。

今回の事件も、女性が「強姦された」と被害届を出したから刑事裁判に発展したのであって、「手で抜いてあげたのに3万円払ってくれなかった」と申告していたら、ここまで大ごとにはならなかったはずです。

そういった、有罪・無罪が微妙である点に加えて、強姦の裁判で無罪判決が出ているため、「ならば詐欺罪か恐喝罪で」と改めて起訴されることもないでしょう。
「一事不再理」の原則で、いったん無罪になった事件を蒸し返すことはできないということです。

(このケースで詐欺・恐喝罪での再起訴に一事不再理が適用されるかどうかには議論の余地があると思いますが、専門的になりすぎるので省略します。刑事訴訟法を学んでいる方は、公訴事実の同一性の範囲に入るか否か、考えてみてください)

逆に、この事件を「強姦」と届け出た女性には、虚偽告訴罪(犯罪でないものを犯罪と申告すると罪になる)が成立しないのか、ということも問題となると思います。
理論上は、そうなると言えそうです。

もっとも、今回の被告人男性が虚偽告訴罪で女性を逆に告訴したとしても、元はと言えば手で抜いてもらおうなどとしたのが間違いじゃないか、身から出た錆じゃないか、ということで、警察官に諭されて終わりなのではないかな、と思います。

つまらない事件が偉大な法原則を生む、と何かの教科書で読んだ記憶がありますが、今回も、つまらない事件が注目すべき最高裁判決を生んだ、そんな事件だったという感想です。
終わり。
前回の続き。
痴漢事件では最近、無罪判決が増えつつあり、強姦事件でも今回、最高裁で無罪判決が出ました。これまで、無実なのに見過ごされて有罪とされた事件も、おそらく皆無ではないでしょう。

この手の事件で冤罪が生じやすい理由は、客観的な証拠が乏しいことや、目撃者が少ないために被害者の証言が決め手になってしまう点にあります。

被害者は、自分が刑事裁判に巻き込まれ、法廷で証言するのも恥ずかしいことであるのに、あえてウソの被害申告をするはずもない、だから被害者の証言は信用してよい。一方、容疑者や被告人は、自分が有利になるよう弁解するのが常であるから、その証言は疑ってかかる必要がある。これが従来の傾向だったと思います。

前回書いたとおり、大多数のケースでは、その考え方でよいのです。ただ、その一般論が妥当しないケースも少数ながら存在する。 

記憶に新しいところでは、2年前、大阪の地下鉄の車内で、女性が乗り合わせた男性客を痴漢として訴え、その男性客が一時、身柄拘束されるという事件がありました。女性は示談金をあてにしてその男性をゆするつもりだったのです。

これは、背後にその女性の友人の男子大学生(後に虚偽告訴罪で実刑)がいて、計画的に行なわれたという、かなり特異なケースであったといえます。

しかし、被害者の証言には時としてウソが混じること、そして、真実であれウソであれ、女性の「このひと痴漢です」の一言で男性は簡単に逮捕されてしまうことを、この事件は明らかにしました。この事件ではたまたま早い段階で真実が露呈したとはいえ、たいていのケースでは長い身柄拘束となり、痴漢と言われた男性は社会的に抹殺されてしまう。

ですから、被害者の証言を重視することは当然であるとしても、それを偏重することはあってはならない。それは刑事訴訟法の教科書にも出てくるような基本的なことなのですが、これまでは軽んじられてきたのです。

今回の無罪判決が出た事件に話を戻しますが、前回書いたとおり、被告人の男性が当初から言っていたのは、「3万円払うからと言って手で抜いてもらった」ということです。しかし男性は3万円を払わず逃走した。

最高裁の判決には明確には触れられていませんが、判事の頭の中には「3万円を払ってくれなかった腹いせで強姦と訴えたのかも知れない」ということがあったでしょう。
そういう点でも、被害者の証言はよくよく吟味される必要があった。今回の最高裁のスタンスは妥当であったと思います。

さて、ではこの被告人、強姦ではないとしても、3万円を払わなかったことについては何の責めも負わなくてよいのか。その点は次回に検討します。
最高裁での無罪判決について触れます。
強姦の容疑で、1審・2審で有罪にされていた被告人に対し、最高裁は逆転無罪判決を下しました(7月25日)。

最高裁というところは、憲法や法律の解釈について審理するところであって、事実そのもの(強姦したか否か)について立ち入って検討することは基本的にはないので、ここまで踏み込んだ判断をすることは異例です。

と、ここまで書いて、以前にも同じような話を書いたなと思いだしたのですが、2年前、強制わいせつ事件で被告人が最高裁で逆転無罪になった判決に触れていました。
最高裁で逆転無罪というのがいかに「異例」かについては、こちらこちらをご覧ください。

以前に書いたのと重複する話は省略するとして、今回の事件の内容を紹介します。

なお、今回の最高裁判決は、最高裁のホームページから見ることができます。
興味のある方は「裁判所」で検索して裁判所のトップページへ行き、「最近の判例一覧」→「最高裁判所判例集」と進んでください。7月25日の「強姦被告事件」の判決です。PDFファイルで、当事者の名前以外は全文見ることができます。

それによりますと、事件は少し理解しがたいものでした。
事件は、平成18年、千葉市内で起こっています。被害女性(当時18歳)の供述によると、被告人の男性(現在53歳だから当時50手前)に、市内の路上で「ついてこないと殺す」と言われ、ビルの階段の踊り場に連れていかれ、そこで強姦されたとのことです。
1審・2審は女性の供述に従って、被告人を有罪とした。

被告人の弁解はこのようなものです。
自分は手に3万円を持って、通りすがりのその女性に声をかけ、以下最高裁判決そのまま引用しますが「報酬の支払を条件にその同意を得て」「手淫をしてもらって射精をした」とあります。
書くのをはばかりますが、たぶん…「3万円あげるから手で抜いて」とでも声をかけたのでしょう。ちなみに
この男性は、ビルの階段の踊り場で抜いてもらったあと、3万円を払わずに逃走しています。

この男性のやっていることもどうかと思いますが、それが事実とすれば、同意の上で手で射精させてもらったというだけであって、強姦にはなりえない。

この事件で証拠となるものと言えば女性の供述だけでした。
これまでの刑事裁判の傾向としては、被害者の証言がかなり重視されていました。もちろん、一般論としてはそれで良いのです。
しかし被告人側が「濡れ衣だ」「被害者がウソをついているんだ」と反論しても、「被害者は被告人と利害関係もないし、別に恨みを持っていたわけでもないから、わざわざウソをつく理由がない」として、反論がたやすく排斥される傾向がありました。

最近は、被害者の供述を偏重しすぎることなく、被告人の供述と比べて、どちらがより信用できるかということが吟味されつつあるようで、裁判のあり方としては、当然、こちらのほうがより望ましいと思います。

この件、次回にもう少し続く。

前回の続き。
光市母子殺害事件の弁護団と、橋下知事の裁判は、最高裁で橋下氏が逆転勝訴となりました。

元々の刑事事件が、犯行当時未成年だった被告人が母と子を殺害したという陰惨な案件で、その被告人を弁護した弁護団が世論の反感を買っていて、大阪府知事になる前のタレント弁護士だったころの橋下氏がテレビを通じて懲戒を呼びかけたという、特殊な背景事情があって注目された事件です。

ただ、橋下氏の勝訴判決の意味するところは「橋下氏のやったことが正しく、弁護団のしていることは誤っている」と最高裁が判断したというわけでは、もちろんありません。

この民事裁判で争われたのは「橋下氏が弁護団の弁護士らに賠償金を払う義務があるかないか」ということであって、これについての最高裁の結論は「橋下氏は弁護団に迷惑をかけたかも知れないけど、それは弁護士としてガマンしてやるべき範囲であった」ということです。

弁護士の仕事は、紛争時に当事者の一方に味方することであるから、当然、反対側の当事者からは恨みを買う。社会的に耳目を集める事件であれば、世論の批判も買う。もともとそういう仕事なんだからガマンしなさい、と言われれば確かにそうです。
だからこの最高裁判決に対する私の感想は、まあそんなものかな、という程度です。

やや話が変わりますが、私が興味深く思ったのは、1審で橋下氏が敗訴して800万円の賠償を命じられたときに、さっさと弁護団の弁護士らに800万円払ったということです。

まだ高裁、最高裁と争えるのに、早々と払ってしまった理由として大きいのは「利息」でしょう。
判決で支払いを命じられているのに支払わないと、利息がつきます。しかも利率は民法上、年5%とされています。今のご時世、郵貯の定額貯金でもつかないほどの高利息です。

最高裁まで長々と争ってその上で敗訴すると、利息分も払わないといけない。
この事案では、1審の判決から最高裁判決まで、2年半くらいかかっているから、もし1審の判決がひっくりかえらなかった場合、800万円×5%×2.5年で、100万円くらい余計に払わないといけなかった。

もちろん、800万円を受け取った弁護団側も、別にお金が欲しくて裁判をしたわけではないだろうから、お金は手つかずのまま置いておき、最高裁判決を受けて、橋下氏に返金したでしょう。

裁判で負けても開き直ってお金を払わない、という人が非常に多い昨今、負けたらさっさと払う、逆転されたら返す、というやり取りは、大変フェアであると思えます。橋下氏と弁護団の思想的な対立は激しいものと思われますが、そのあたりはさすがに弁護士同士ということなのでしょう。

ということで、最高裁判決の原文にも当たらないままに雑多な感想を書いてしまいましたが、とりあえず以上です。
最近、更新頻度が落ちつつありますが、今回は橋下知事の名誉毀損事件の逆転勝訴判決についてです。

おおよその経緯は皆さんご存じだと思いますが、平成19年、知事になる前の橋下弁護士が、テレビで、光市母子殺害事件の被告人の弁護団に対する懲戒請求を呼びかけ、弁護士会に懲戒請求が殺到した。その弁護団の弁護士が橋下氏を訴えたという事件です。

平成20年10月、1審・広島地裁は、弁護団に対する名誉毀損と、不法行為の成立を認めた。前者は、弁護団への誹謗中傷により、各弁護士の名誉をおとしめたということで、後者は、懲戒請求への対処などにより業務に支障が生じた、ということです。

私は、この判決が出た直後、旧ブログにて、名誉毀損の成立は少し疑問に思う、と書きました(こちら
)。
 

憲法は弁護士に被告人の弁護をするよう定めており、それに沿って堂々弁護活動すればよく、その弁護士の名誉が橋下氏の発言で傷つくわけでもなかろう、ということです。もちろん、そうした弁護活動の必要性を理解しない人も多くいますが、それは元々そうなのであって、橋下氏の発言で新たに名誉が毀損されるわけではない、と思いました。

2審の広島高裁は、私の見解に従って(というわけではないでしょうが)、名誉毀損の成立は否定し、不法行為のみを認めました。
そして7月15日の最高裁判決は、不法行為の成立も否定し、弁護団側の請求をすべて棄却して、橋下氏の全面勝訴となった。

新聞等を読む限り、理由はいろいろ書かれています。
橋下氏の発言は不適切であるが、弁護士に対する懲戒請求という制度がある以上、その利用は広く認められるべきで、各弁護士がそれに対応すべきことも当然である。弁護活動は重要だが、弁護士はそれに理解を得るよう努力することも求められている。等々。

ただ、これらの理由はあくまで「傍論」であり、直接的な理由は、「弁護士業務に重大な支障は生じていない」ということのようです。

懲戒請求をされた弁護団の各弁護士は、それに対する答弁書を弁護士会に提出するなど、それなりの対応を求められたはずですが、実際にどれくらいの負担が生じたのかは、記事にも出てないので、よくわかりません。ただ最高裁は「受忍限度」(ガマンしてやるべき限度)の範囲内だった、と言っています。

次回にもう少し続く。

前回の続き。
自殺教唆という犯罪をもう少し詳しく述べると、「死ぬようにそそのかすこと」、もう少しきちんと言えば「自殺の決意を生じさせること」を言います。

ですから、たとえば他人に「死ね」と言うだけでは、自殺教唆にならないでしょう。人から死ねと言われただけで「よし、死のう」と思う人は、まずいないからです。

前回触れた事件の女性容疑者は、男性に「自分から死のうと持ちかけた」と言っているそうです。詳しい経緯は書かれていませんが、二人の心中、情死が想像されます。

恋愛関係にある二人が、様々な事情でその恋が結ばれぬため、あの世で一緒になろうと死を決意することは充分ありうる話で、したがってそれを持ちかけるのは自殺教唆にあたるでしょう。

さらに、相手がうとましくなって、心中と見せかけて相手を死なせるようなケースも実際にあります。
実際の判例を紹介します。比較的有名な事件で、刑法の教科書には必ず出てきます。

ある男性が、愛人の女性に別れ話を持ちかけたところ、女性は納得しなかったため、男性はいっそ心中しようかと言い、女性はそれに応じた。しかし男性は途中で死ぬ気がなくなり、用意した毒物(青酸ソーダ)を、「僕もあとから行くから」とウソを言って女性にだけ飲ませ、女性は死亡、自分は生き残った…という事案です。

最高裁(昭和33年11月21日)は、この男性を、自殺教唆ではなく、単なる殺人罪であると判決しました。
女性は騙されて死ぬ気になったのであって、本当のこと(男性が一緒に死ぬ気でないこと)を死っていれば死んでいなかった。本来は死ぬ気でなかった人を死なせるのは単なる殺人である、ということです。

今回の二色の浜の事件では、警察は容疑者の女性を自殺教唆で逮捕しましたが、おそらく殺人罪の適用も念頭に置いていることでしょう。死亡した男性と入水するに至る経緯や、女性だけがなぜ助かったのかということが、今後も捜査されることと思います。

心中が美しいのは「曽根崎心中」など、お話の中だけであって、実際には、持ちかければ犯罪、死ねば無駄死にという、つまらないものです。亡くなった男性は哀れでなりませんが、そんなことに付き合うべきではなかったのです。
お知らせ
一時的に戻ってきました。 左上に「裏入口」という小窓が出てくるかも知れませんが、当ブログとは関係ありません。おそらくアダルトサイトへの入口なので、クリックしないでください。
現在の来訪者数
ブログ内検索
アクセス解析
忍者ブログ [PR]