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大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
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久しぶりに興味深い事件です。日経4日夕刊から。

職業に就く意思なくうろついていたため「浮浪の罪」で逮捕され、その後、「覚せい剤使用罪」の疑いで起訴された男性が、無罪になったという話。大阪高裁3月3日判決。

警察はもともと覚せい剤使用罪で起訴するつもりだったが、証拠がないから逮捕状が出ない。前回の話で言えば、「逮捕の理由」つまり容疑がないから、裁判官は逮捕状を出さないわけです。そこで警察は「浮浪の罪」で現行犯逮捕したが、大阪高裁はこれを「違法な別件逮捕だ」とした。

別件逮捕については、舞鶴女子高生殺害事件の話で触れました。証拠がないからとりあえず別の容疑で逮捕しておくというもので、あからさまな場合は違法となります。(過去の記事へ

覚せい剤使用のほうは証拠がある(記事には出てないけど、尿検査でもしたのでしょう)。
しかし大阪高裁は、これは違法な別件逮捕中に得られた証拠だから採用しないとした。これを「違法収集証拠の排除法則」と言いまして、判例上そういう扱いが認められている。
結局、覚せい剤使用の証拠はなくなり、無罪となったというわけです。

と、いちおう教科書的な解説をしましたが、最も触れたかったのはそこではありません。
「職業に就かずにうろついていると罪になるのか」という点です。

結論を言いますと、なります。軽犯罪法1条4号には、「働く能力がありながら働かずに住居も持たずうろついている者(要約)」とある。30日未満の拘留または1万円未満の罰金。

軽犯罪法は読んでみると面白い条文で、有名なところでは立小便、他には切符を買う列に割り込むなどの行為が犯罪と規定されています。
(旧ブログ「役に立たない法律知識 俳句になっている条文part2」のコーナーで取り上げました。こちら。軽犯罪法の条文はこちら

ただ、条文に該当すると直ちに逮捕されるわけでもない。現に大阪城公園などではホームレスの人たちがたくさん住みついていますが、あの人たちが一斉逮捕されたという話も聞かない。

だから、特定の人を取り上げて「浮浪の罪」とするには、あえてその人を逮捕するだけの「理由と必要性」が厳密に必要となる。にもかかわらず本件では逮捕すべき特別な事情もない。
それどころか、覚せい剤使用罪の取調べのための別件逮捕だったわけで、違法性は高いと言わざるをえない。

そういうことで、刑事訴訟法的にも興味ある判決でしたが、何より「浮浪の罪」などというものが実際に運用されることもあるのだなという点を興味深く感じました。

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