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海老蔵事件に触れたついでに、さらにどうでもよい話を続けます。
週刊誌などの報道では、リオン容疑者の知人(暴走族の元リーダーとかいう人)の「証言」が紹介されていて、最も有名なものは、「灰皿にテキーラを入れて飲ませようとした」というものでしょう。
私は、テキーラよりはスコッチが好きなのですが、どっちであれ酒好きの私としては、灰皿にテキーラを入れるなどというのは、酒に対する侮辱であり、もし本当なら殴られても仕方がないと、感情としては思います。
個人的感情はさておき、ここでは灰皿にテキーラを入れる行為の違法性について検討したいと思います。
まず、灰皿にテキーラを入れること自体は、刑法上の犯罪には何ら触れないでしょう(もちろん店の人には怒られるでしょう)。
昔の有名な判例として、料理屋で皿に放尿した行為が器物損壊罪(刑法261条、3年以下の懲役または30万円以下の罰金)にあたるとされたケースがありますが、これはおしっこをかけられた料理皿など心理的に使えなくなるためです。テキーラを入れられた灰皿は、洗えばまた使えます。
また、相手を脅すなどして灰皿のテキーラを無理に飲ませると、強要罪(刑法223条、3年以下の懲役)になります。実際に飲まなくても無理に飲ませようとすると、強要罪の未遂になります。
灰皿テキーラを強要して飲ませて、相手がお腹をこわしたりすると、傷害罪(刑法204条、15年以下の懲役または50万円以下の罰金)にもなるでしょう。
また、他の客がいる店内で「俺の灰皿テキーラが飲めねえのか!」などと大声で凄むと、威力業務妨害罪(刑法234条、3年以下の懲役または50万円以下の罰金)になりますし、「お前のようなヤツには灰皿テキーラがお似合いだ!」などと侮辱すると、侮辱罪(刑法231条、30日未満の拘留または1万円未満の科料)にもなりうるでしょう。
では、海老蔵の灰皿テキーラが上記いずれかの犯罪に該当するのだとたら、リオン容疑者がそれに激昂して海老蔵を殴った行為は正当防衛になるのかというと、それはまず無理でしょう。
仲間に侮辱を加えられたから殴ってやり返す、というのは、任侠ものや香港のカンフー映画ならよくある話でしょうけど、現実には許されません。
正当防衛(刑法36条で無罪)が認められるのは、あくまで自分または他人に危害が加えられているときに限ります。
たとえば海老蔵が暴走族元リーダーの口を押さえつけて灰皿テキーラを流し込もうとしていて、そこにリオン容疑者が割って入って海老蔵を突き飛ばした、というようなケースであれば、正当防衛となる余地もあるでしょうが、さすがに海老蔵はそこまでしていないと思います。
ということで、「海老蔵事件を追う」シリーズは以上2回で終了します。