大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
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刑事事件に関する注目すべき判決が出ていますが(緒方元検事長の詐欺の有罪判決や、財産侵害に対する正当防衛を認めた最高裁の無罪判決とか)、ひとまず、ツッコミ所の多い事件から触れてみたいと思います。
東武線の駅員が「しっかりしてない」ことに腹をたて、東武線の特急電車のトイレに備え付けのトイレットペーパー2個を流して詰まらせたということで、50歳の男性が、器物損壊罪と偽計業務妨害罪の容疑で逮捕されました(16日夕刊各紙)。
動機はともかく、便所に紙を詰まらせると犯罪になるのか、検討します。
まず、器物損壊罪。
当ブログでも何度か書きましたが、損壊とは、「物の効用を喪失すること」、平たく言えば、もはや使えない状態にすることを言います。
たとえば、「食器に放尿した」という事案が器物損壊罪になったという事案は古くから有名で、これはたしかに、おしっこをかけられた食器なんて、いくら洗っても、そんな汚らしいものを、もはや使う気になりません。
しかし、便所に紙が詰まったというだけなら、その紙を取り除けばまた使えるのであって、もはや使う気にならないと言えるかどうかは疑問であると、私は考えます。
もう一つの、偽計業務妨害罪。
これは文字のとおり、偽りの計略を用いて他人の業務を妨害することを言い、字面の上だけでは、ちょっと知能犯的なニュアンスのある犯罪です。
しかし、便所にトイレットペーパー2個分を詰まらせるという行為は、どう考えても、あまり頭の良さそうな犯罪ではない(いちおうフォローしますがこの被疑者の職業は塾講師だそうで、本当はきっと頭の良い人だと思うのですが)。
果たして便所に紙を詰まらせるのが「偽計」なのか。
刑法の教科書によりますと、「目に見えない方法」で業務を妨害するのがこの偽計業務妨害罪で、「目に見える方法」で妨害するのが威力業務妨害罪であるとされます。威力とは、「人の意思をくじくほどの力」とでも理解してください(いずれも懲役3年以下で、罪の重さは同じです。刑法233条、234条)。
たとえば電車のシートに、目に見えないように針を埋め込むのは「偽計」で、乗客の目に触れるような形で針を刺すのは「威力」であるとされます。
便所で言えば、目に見える形で便器いっぱいに紙が詰まっていれば、「何でェ、こんな便器、使えねえじゃねえか」(東武線なので東京弁で)と、用を足そうとしていた利用者の意思をくじくので威力業務妨害になります。
本件は偽計業務妨害が適用されたようなので、たぶん、
「一見してわからないけど、便器の奥深くに紙が詰め込まれてあって、利用者が用を足したあとに水を流そうと思ったら詰まっていてエライことになった」という状況であったのではないかと想像しています。
利用するほうにとっては、そっちのほうがよほどショックで、これこそ意思をくじく「威力」に該当しそうな気もするのですが。
偽計か威力かはともかく、不用意に便所を詰まらせると「業務妨害」になるというのが、警視庁の解釈のようです。ということで、公共のトイレを利用する側は今後注意すべきかも知れません。
東武線の駅員が「しっかりしてない」ことに腹をたて、東武線の特急電車のトイレに備え付けのトイレットペーパー2個を流して詰まらせたということで、50歳の男性が、器物損壊罪と偽計業務妨害罪の容疑で逮捕されました(16日夕刊各紙)。
動機はともかく、便所に紙を詰まらせると犯罪になるのか、検討します。
まず、器物損壊罪。
当ブログでも何度か書きましたが、損壊とは、「物の効用を喪失すること」、平たく言えば、もはや使えない状態にすることを言います。
たとえば、「食器に放尿した」という事案が器物損壊罪になったという事案は古くから有名で、これはたしかに、おしっこをかけられた食器なんて、いくら洗っても、そんな汚らしいものを、もはや使う気になりません。
しかし、便所に紙が詰まったというだけなら、その紙を取り除けばまた使えるのであって、もはや使う気にならないと言えるかどうかは疑問であると、私は考えます。
もう一つの、偽計業務妨害罪。
これは文字のとおり、偽りの計略を用いて他人の業務を妨害することを言い、字面の上だけでは、ちょっと知能犯的なニュアンスのある犯罪です。
しかし、便所にトイレットペーパー2個分を詰まらせるという行為は、どう考えても、あまり頭の良さそうな犯罪ではない(いちおうフォローしますがこの被疑者の職業は塾講師だそうで、本当はきっと頭の良い人だと思うのですが)。
果たして便所に紙を詰まらせるのが「偽計」なのか。
刑法の教科書によりますと、「目に見えない方法」で業務を妨害するのがこの偽計業務妨害罪で、「目に見える方法」で妨害するのが威力業務妨害罪であるとされます。威力とは、「人の意思をくじくほどの力」とでも理解してください(いずれも懲役3年以下で、罪の重さは同じです。刑法233条、234条)。
たとえば電車のシートに、目に見えないように針を埋め込むのは「偽計」で、乗客の目に触れるような形で針を刺すのは「威力」であるとされます。
便所で言えば、目に見える形で便器いっぱいに紙が詰まっていれば、「何でェ、こんな便器、使えねえじゃねえか」(東武線なので東京弁で)と、用を足そうとしていた利用者の意思をくじくので威力業務妨害になります。
本件は偽計業務妨害が適用されたようなので、たぶん、
「一見してわからないけど、便器の奥深くに紙が詰め込まれてあって、利用者が用を足したあとに水を流そうと思ったら詰まっていてエライことになった」という状況であったのではないかと想像しています。
利用するほうにとっては、そっちのほうがよほどショックで、これこそ意思をくじく「威力」に該当しそうな気もするのですが。
偽計か威力かはともかく、不用意に便所を詰まらせると「業務妨害」になるというのが、警視庁の解釈のようです。ということで、公共のトイレを利用する側は今後注意すべきかも知れません。
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