大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
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弁護士と相談するコツについて、シリーズ2回目です。
前回書いたように、弁護士にウソをつく人は少なからずいます。今回は、明らかなウソとまではいかないけど、事実をありのままに語ってくれない人が多い、という話を書こうとしています。こういう人は非常に多いです。
唐突ですが、私の好きな司馬遼太郎の小説「関ヶ原」に、こんなシーンがあります。
豊臣秀吉亡き後、豊臣政権の奉行であった石田三成は徳川家康を討とうとしますが、多くの武将は、徳川のほうについてしまう。
石田三成の側近であった島左近は、来るべき決戦に備えて、どれだけの武将が家康のもとに走ったのか、石田三成から現状を尋ねると、石田三成はこう答えます。
「今こそ、亡き太閤の恩に報いるべきときではないか」。だから、徳川でなく石田方につく「べき」だと。
島左近は、双方の戦力を計算した上で戦略を立てようと思っているのですが、石田三成は事実そのものを見ずに「こうあるべきだ」という話しかせず、島左近を絶望させます。
さすがに、実際の石田三成がそこまで現状分析能力を欠いていたとは思えず、これはリアリストの島左近と理想家の石田三成を対比させるための脚色だと思いますが、似たような話は、現実にも多い。
事実そのものをありのままに捉えるということは実際には難しく、人はそこに、自分自身の希望や理想を加えて解釈してしまうのです。
たとえば、「迷惑をかけないからと知人に頼まれて約束されて保証人になったのに、知人が銀行にお金を返さないから、銀行から請求を受けている」といった相談があって、その場合、弁護士として確認すべき事実は「保証契約書にサインしたか否か」です。これが決定的な事実で、サインしたか否かでその後の弁護方針が全く違ってくる。
しかし相談者は「絶対に迷惑をかけないと言われたのだ」(だからこのように迷惑をかけられるべきではない)という話に始まって、なぜ知人からそのようなことを頼まれたのか、その知人のためにどれだけのことをしてやったかという話にまでさかのぼって、うっかりしているとその人の一代記を聞かされたりします。
弁護士業の人々は、いろんな人のいろんな人生に興味を持っているので、そういう話も嫌いではないのですが、とはいえ、その人の相談に割ける時間は有限です。やむなく、一代記をさえぎった上で、必要な事実だけ聞くことになります。
相談者の中には、話をさえぎられることに不満な人もいますが、これは、その事件を速やかに解決するために必要な事実を、まずは確定させるためだと、理解してください。
小説の中で石田三成は、最後まで理想論にとらわれて、関ヶ原で敗れ、首を斬られます。そういう最悪の事態を防ぐためには、まずは「今」の事態がどういう状況なのかを明確にする必要があり、それを前提に戦略なり弁護方針なりを考えていく必要があるのです。
だから、聞かれたことに対しては、自分なりの解釈や弁解を加えず、事実そのままを答える。それが、短い相談時間で(つまり安い相談料で)、多くの成果を得るために最も重要なことなのです。
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