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大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
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胴上げ後の落下による死亡で罰金刑、とのニュースに触れます。
 
報道によると、60歳の男性を同僚3人が胴上げし、きちんと受け止めずにその男性は落下し重傷。約10か月後に亡くなったとのこと。
同僚の男性は大津簡易裁判所にて「過失致死罪」で罰金10万円の略式命令を受けたとか(なお略式命令とは、比較的軽微な犯罪について、法廷を開かず書類審査だけで罰金を命じる、刑事裁判の簡略版です)。
 
人を死なせておいて、書類審査だけで罰金10万円ですむとは、誰しも「軽い」と感じることと思いますが、刑法上、人を死なせる罪にもいろいろあります。
 
一番重いのは当然、殺人罪(刑法199条)です。これは殺意を持って殺した場合に適用されます。刑罰は、5年から無期の懲役、または死刑。
次に重いのは、傷害致死罪(205条)で、殺すつもりまではなく、暴力などをふるってケガをさせようとしたら、死んでしまったという場合です。3年から20年の懲役。
 
殺すつもりもないし、暴力もふるっていないのに、人が死んでしまったという場合が、今回適用された過失致死罪(210条)で、刑罰は「50万円以下の罰金」と定められています。過失致死罪が適用される場合は、懲役や死刑は科することができないのです。
 
今の刑法は明治41年にできていますが、昔から日本人は、故意の犯罪は重く非難するけど、「わざと」ではない過失の場合は重く責めない、という国民性があって、そのため過失犯罪の刑罰は軽くなっている、と教科書には書かれています。
 
もっとも、過失致死罪が適用される場面は、実際にはほとんどありません。
たとえば医師が手術ミスで患者を死なせると、業務上過失致死罪(211条1項)となり、5年以下の懲役になります。
自動車で人をはねて死なせてしまうと、自動車運転過失致死罪(211条1項)で7年以下の懲役、または危険運転致死罪(208条の2)で1年から20年の懲役となります。
 
その他にも、重過失致死罪(211条1項)というのもあって、5年以下の懲役。
実例としては、自転車で人をはねて死なせたとか、ゴルフクラブの素振りをしていて通りがかった人に当たって死なせたというケースに適用されています。
 
このように、過失致死罪にも重いタイプのものがたくさんあって、それぞれ懲役刑が定められています。
だから、単純な「過失致死罪」が適用されるのは、殺すつもりもないし、暴力もふるっていない、重い過失もなかった、それで人が死んだ、という、ちょっと考え難い事案に限られます。
 
今回の、胴上げ落下死がこれにあたる、というのが検察庁と裁判所の判断なのですが、まだ腑に落ちない部分がなくはない。
胴上げ行為を暴行と捉えることもできなくはないし(暴行とは人の体に物理的な力を加えることを言うので、胴上げもこれにあたりうる)、胴上げしておいて落としたのだから、重過失と言えそうにも思います。
 
だから今回の結論は、同僚が遺族に相応の対応をしていて、おそらく賠償の話も進んでいて、これ以上に懲役刑まで科するほどの悪質な事案ではない、との判断が先にあったためではないかと想像しています。
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