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大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
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最近、刑事事件がらみの話が多いですが、今日は民事裁判の話です。
 
ジャーナリストの田原総一朗氏が北朝鮮の拉致被害者について、テレビで「外務省の人も(被害者たちが)生きていないことはわかっている」と発言したことに対し、被害者の家族が、精神的苦痛を受けたとして、1000万円の賠償を求める裁判を神戸地裁に起こしています。
 
この裁判で先週、神戸地裁は、田原氏に対し、発言の根拠となる取材テープを提出しなさいという命令を出しました。
 
小さい新聞記事だったので以下は推測ですが、田原氏はこの裁判でおそらく、自分の発言はきちんとした取材に基づいたものであり、正当な報道だ、ということを主張しているのでしょう。
 
たしかに、こうした問題についてきちんと取材した上で発言したのであれば、それが一部の人に不快感を与えたとしても、表現の自由、報道の自由として許される余地があります。
 
田原氏は、取材したことを証明するために、外務省の人にインタビューした際のやり取りを、一言一句「文字」にして、証拠書類として提出していた。
それに対して、原告(被害者の家族)側は、本当にそんなインタビューをしたのなら、テープそのものを出せと主張し、裁判所はその申立てを認めたのです。
 
これは民事訴訟法に規定のある、文書提出命令という手続きです。
事実を明らかにするために重要な文書(録音テープやビデオなども同様)を、当事者の一方が提出しようとしないとき、裁判所にそれを命じてもらう手続きです。
 
どういう場合に提出命令が認められるかは、民事訴訟法に規定がありますが、自ら「引用」した文書は提出命令の対象となるとされています。「引用」するくらいなら、その文書(テープ)は隠すつもりはないんでしょ、だったら出しなさい、という理屈です。
 
田原氏は「ちゃんとしたインタビューをして、その録音をし、そのテープを文字にしました」と、テープの存在を引用しているので、これは文書提出命令の対象になると考えてよいでしょう。
 
もし、この命令に従わないとどうなるかというと、さすがに、裁判所の人が自宅に踏み込んできて文書やテープを取り上げていく、というようなことはしません。
そんな面倒なことをしなくても、もっと端的に、「命令に従わないのは、そいつがウソをついているからだ」と扱えばよいのです。
 
細かい条文の話は省略しますが、この事件で言えば、「そんなテープは存在しない、きちんと取材したなんてウソだ」という原告側の主張を正しいものとして扱うことになり、田原氏は不利になります。
 
田原氏は、テープを提出すると、取材に応じた外務省の個人が特定されることになり、これでは「取材源は明かさない」という報道の自由の根幹が侵害されるとして、命令を取り消せという手続き(即時抗告)を行ないました。
 
こういうときに取材の自由、報道の自由がどこまで守られるべきかについては、難しい問題もありますが、そのあたりは次回に検討したいと思います。
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