忍者ブログ
大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
[116]  [115]  [114]  [113]  [112]  [111]  [110]  [109]  [108]  [107]  [106
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

最近、書きたいネタはたまっているのですが、事務所での業務も慌しく、自宅では息子が「はいはい」をしだして目が離せず、ゆっくり文章を書く時間がなかなかありません。

とりあえず今回は、札幌の書店で本棚が倒れ、小学生の女児が重体になった事件について。
この書店の店主は、民事上・刑事上の責任を負うことになるのか。それは、書店側に本棚の管理に「過失」(落ち度)があったか否かによります。

「過失」とは、当ブログでも度々書いてきたかと思いますが、「そういう結果を予見できて、回避できたのに、しなかったこと」を意味します。

書店だから、小さい子供を含めてたくさんの人が出入りするし、子供なら何かの拍子に本棚にぶつかってしまうかも知れない。ちょっとした地震程度ならしばしば起こる。
そういう事態は充分「予見」できるから、それに対応して、本を詰め込みすぎないようにし、本棚に「つっかい棒」などの措置をするなどによって、事故を「回避」しないといけない。

それをしないで事故を起こせば「過失」ありとなって、民事上は賠償問題となり、刑事上も過失致傷の罪になりうる。
ただ、想像を絶するような大地震が来たとか、子供が店内で常軌を逸する大暴れをしたせいで本棚が倒れたなどの場合は、不可抗力ということで過失責任は問われない。
…と、一応単純には言えますが、過失か不可抗力か、その線引きはなかなか難しいです。

教科書的に言えば、その結果を抽象的に想定できる、というだけでは足りず、「具体的に予見できる」必要があります。
私が素人に説明するときは、
「その結果を世間一般の人が見て、『まさかそんなことになるとは』と思う場合が不可抗力で、『そらそういうことも起きるで』と思う場合が過失です」と言っています。

冒頭の書店の事件がどちらにあたるか。警察がすでに本棚と本を押収して当時の状況を調べるらしいので、これからの調査を待つことになるのでしょう。


話は変わりますが、この事件で書店の経営者の人が取材を受けて、「本棚に問題はありませんでした」といった趣旨のことを答えていたのをテレビニュースで観て驚きました。

こういうときはひとまず、自分の店で人が大ケガしたことについて詫びるのが先だと思うのです(もちろん、メディアの前で謝罪する義務などないけど、あんなことを言うくらいなら会見などしないほうがいい)。
道義的な責任としてお詫びをした上で、法的責任があるかどうかは、後で慎重に検討すればよいのです。日本には幸い、「謝ったら負け」なんてバカな慣習はないのですから。

コンプライアンスか天ぷらうどんか知りませんが、薄っぺらな法令遵守の考え方を持ってしまうと、こういうときに人として当たり前の対応もできなくなるのだな、と思ってしまったのです。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
お知らせ
一時的に戻ってきました。 左上に「裏入口」という小窓が出てくるかも知れませんが、当ブログとは関係ありません。おそらくアダルトサイトへの入口なので、クリックしないでください。
現在の来訪者数
ブログ内検索
アクセス解析
忍者ブログ [PR]