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大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
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亀井金融相のもとで「モラトリアム法案」が検討されているとのことです。
これは要するに、銀行など金融機関から借金をした人が、一定期間、その返済をしなくてもよくなるという法案です。

私は、この法律は極めて「異常」なものとして大反対でして、そのことについて書きたいと思います。

まず、資本主義・自由主義の社会においては、国家は基本的に、国民のやることについて口出ししてはなりません。

犯罪にでも該当しない限り、私たち国民(「公」に対する存在として「私人」(しじん)と言います)は自由に行動できるし、私人と私人の間では自由に経済活動をしたり、契約を結んだりすることができる。これを「私的自治の原則」と言い、近代法の大原則であるとされています。

モラトリアム法案は、私人と私人の間で、「お金を借りて、いついつまでに返します」と契約をしたところに、国家が「いや、その返済日はもっと先にせよ」と口を挟み、私人の契約に介入してくることを意味します。

たしかに、私人の契約に国家が介入する場合は、実際にはかなり存在します。
たとえば、利息制限法という法律は、お金を貸したときの利息は年15%~20%までと、上限を定めています。サラ金の利息はつい最近までは年30%~40%程度の高利でしたが、利息制限法を越える利息は、「過払い金」として返還請求ができます。

サラ金(私企業)と顧客(私人)が高利に納得して契約したのに、利率の上限について国が口を挟むのは、おかしいとも思える。
しかしこれは、昔から、お金を借りる側は立場が弱いために、貸主側の提示する高い利息に納得せざるをえず、利息がかさんで、最後には破産や自殺にまで至ってしまうという実態があったためです。
そのため、弱者救済の「政策」として、私的自治という「法理論」の例外を認めているのです。

利息制限法は昭和29年にできた法律ですが、近年でも、ヤミ金融からサラ金以上の高利でお金を借りた人が自殺に追い込まれるというケースが存在することから、こういう政策は必要なのだと思われます。

では、モラトリアムという政策は必要か。
これは借金の返済日が少し先に延びるだけで、借金の元本や利率はそのままです。これで、誰かが救済されるでしょうか。

たとえば、借金苦で首をくくって自殺しようという人がいて、その返済日が半年ほど先延ばしになったところで、首をくくらなくて良くなるでしょうか。
その半年間にお金をためて返済できるくらいの能力や資力のある人なら、もともと首をくくるような状況にはならないはずです(もっと直接的にいうと、首をくくらないといけないような人は、半年待ってあげても最後にはやはり首をくくらないといけない)。

かなり突き放した言い方ですが、私的自治という法理論の大原則の例外を作るわけですから、どれほどの効果があるのか、事実を踏まえて冷厳に検証してもらわないと困る。

そうでないと、「何だか大変な人が多そうだから」という雰囲気や気分だけで、国家が私たちの経済活動に強制的に介入できるという、ひどい先例ができてしまうかも知れないのです。

この話、もう少しつづく。
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