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大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
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シリーズ3話目で、検察庁での修習の話を書こうとしています。
 
検察庁では、非常に多くの興味ある経験をさせてもらえました。
たとえば、パトカーに乗せてもらうとか、刑事さんのパトロールに同行するとかいう研修もありました。これは何の勉強かと言われると、おそらく、これまでは刑事訴訟法の教科書の中で文字として読んだだけであった「捜査」の現場を見せるためでしょう。
 
それから、監察医の死体解剖に立ち会うという研修もあり、これなどは、最後まで正視できない人は検察官や裁判官になれないと言われています。私は最後まで立ち会い、その点の資質は問題なかったようなのですが、公務員になるほどの協調性がなかったために検察官や裁判官へのお声がかからなかったのは、前々回に書いたとおりです。
 
私が検察修習のころで最も記憶に残っているのは、現職の刑事の話です。
大阪地検の会議室に、私たち司法修習生のグループ20名ほどが集められ、大阪府警で殺人事件の捜査を担当している刑事から、捜査現場の話を聞かせてもらえることになりました。
 
その刑事は私たちに、様々な「死体写真」を見せてくれました。もちろん、捜査資料から抜粋したものですから、いずれも「他殺体」です。どんな写真だったかは逐一書きませんが、特に悲惨だったのは、バラバラ殺人の被害者となって切り刻まれ、ポリ袋に入れて放置された女性の写真でした。
 
私はそれらの写真を、すべて手にとってしっかり見ました。でも苦手な人は、目をそむけるか、目をつむるかしていました。
 
死体解剖といい、こういった事件写真の閲覧といい、これらは決して、タチの悪い「度胸試し」の意味で行なわれているわけではありません。
 
この写真を持ってきた刑事は、私たち司法修習生にこんな話をしました。
「このように死体には必ず、犯人が使った凶器の痕が残っています。殺されて死体になった人たちは、自分の体にその痕跡を残すことで、どうか犯人を捕まえてくださいと、叫び続けているんです。私たちはその叫びに答えて、犯人を捕まえるために、日々死体と向き合っているんです」
 
この刑事の話を聞いて、理不尽な犯罪に怒りを覚えない司法修習生はいないでしょう。
このとき一緒に話を聞いた同期生たちは、ある者は検察官になって容疑者を訴追し、ある者は裁判官となって刑罰を言い渡し、ある者は私のように弁護士になって、容疑者の言い分を聞いたり、被害者に弁償を行ったりしていします。
 
弁護士といえば、とにかく容疑者のやったことを言いくるめてその罪を軽くする役割をすると思われている部分もありますが、出発点は同じなのです。
 
裁判官、検察官、弁護士のいずれであれ、起こった事件は自分の目でしっかりと見て、事件の解決や被害の回復のために何をすればよいかを考えます。そして、日本国憲法や刑事訴訟法がそれぞれに課している役割に応じて、アプローチの仕方が違うというだけであり、犯罪自体に対する素朴な怒りというのは、どの立場でも変わりはありません。
 
司法修習時代に見せられる様々な現実は、このように、以後いずれの仕事に就くにせよ、職務を果たすに際しての根本をなす原体験となることが多いのです。
 
そして次回はようやく、巡視艇とヘリコプターの話の予定です。
 
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