大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
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厚生労働省の郵便不正疑惑で、村木元局長が無罪判決を受けました。保護責任者遺棄致死の話の続きは後回しにして、やはりこっちの事件に触れます。
ただこの事件、内容自体が地味なのと、判決までの経過があまりに異例で、何が問題だったのか、わかりにくい部分もあるかも知れません。
それを理解していただこうと思っているのですが、前提として、そもそも刑事裁判において「有罪・無罪」はどのようにして決まるのかについて述べます。
以下の内容を知っていただければ、誰でも裁判官になれます(その後の努力次第で)。
有罪・無罪を決めるルールは、大きくまとめると以下のことに尽きます。
ルール1。「被告人を有罪とするには、被告人がその犯行をしたという確かな証拠が必要である」。
ルール2。「証拠とは、物(凶器や死体など)、書類(警察・検察の作った供述調書など)、証言(法廷で証人が話したことなど)と、形は基本的に何でもよい」。
簡単なルールのようですが、ただし、以下の制約があります。
ルール3。「被告人自身の自白も証拠に使えるが、自白以外に証拠がない場合は、有罪にできない」。
ルール4。「警察・検察の作った供述調書は、任意の証言でない(つまり強制された)とか、信用性がないなどとして弁護側が異議を唱えた場合は、証拠にしてはいけない」。
このルールを使って、いくつかの「練習問題」を掲げてみます。
例1。殺人事件で、被告人は「私が殺しました」と自白しているが、死体もあがらず、目撃者の証言もない。この場合、被告人を有罪にできるか。
答え。できない。無罪となります。ルール3です。自白だけでは有罪にできない。
例2。他殺体が発見され、被告人が「私がやりました」と自白している場合はどうか。
答え、有罪にできます。被告人の自白にプラスして、死体という「自白以外」の証拠があるから、ルール3に反しない。
ただし、被告人が殺したものなのかどうかは、死体を見ただけでは判明しません。警察や検察が強引に自白させる場合もあります。無実の男性が幼女殺害容疑で無期懲役判決を受けた足利事件のような「冤罪」は、こういうときに生じます。だから自白が信用できるかどうかは、慎重に吟味される必要があります。
例3。死体は発見されなかったが、被告人は「私は人を殺しました」と自白していて、目撃者が「この人(被告人)は人を殺してます」と法廷で証言した場合はどうか。
答え。有罪にできます。自白にプラスして、証人の証言が証拠となる。
例4。死体は発見されず、被告人は「俺はやっていない」と否認したが、目撃者は「この人は殺してます」と証言した場合は。
答え。有罪にできます。被告人の自白はないが、証人の証言を証拠にできる。自白だけでは有罪にできなくても、他人の証言だけで有罪にすることはできます。
平成14年に福岡で起きた一家殺人事件(死体はバラバラにして廃棄されたため発見されず、目撃者の証言だけで主犯に死刑判決が出た)は、この類型にあたります。
以上、ここまで理解いただければ、誰でも裁判官になれます(その後の努力次第で)。
これを前提として、今回の郵便不正事件で無罪判決が出た理由について、次回書きます。
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