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大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
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広島の女児殺害事件で、広島高裁が地裁の1審判決(無期懲役)を破棄差戻し(9日)。

ペルー国籍のヤギ被告人が、女児にわいせつな行為をした後に殺害してダンボールに入れて放置したという、注目されていた事件です。
高裁判決は何を意味するかわかりますでしょうか。

弁護側は、無期懲役は重すぎると言って控訴し、検察側は軽いと言って控訴した。
被告人に対する量刑はどうなるのかと思っていたら、高裁は、
「量刑以前の問題であって、被告人が何をやったかがきちんと明らかにされていない」
ということを理由に、地裁に裁判のやり直しを命じたのです。

1審の地裁判決は、被告人が女児に対して「自宅またはその周辺で」わいせつ行為をした、と判断したのに対し、2審の高裁は、「自宅か周辺か、どちらかはっきりさせなさい」と言った。

ここで前回書いた話に戻ります。
刑事事件の判断が、ミリ単位でなくセンチ単位の話でよいなら、つまり素人にもわかる大ざっぱなものでよいなら、
「自宅かその周辺かはどっちでもよい、要するにこの被告人は女の子にヤラシイことをした末に殺害したんでしょ」とだけ判断すればよいとも言える。

しかし、女の子を他人の目に触れない自宅に連れ込んでわいせつ行為をするのと、周辺つまり人通りのある公道でそれをするのとでは、やはりやっていることの意味合いはずいぶん違うし、それが罪の重さにも響いてくることも考えられる。

そこを大ざっぱにしてはいけないのだけど、この事件の審理は、今後の裁判員制度を見据えて、かなり早い審理(約50日だそうです。事案の重さからして、確かに早いです)で判決を下した。

おそらくヤギ被告人は、捜査段階では、検察側の筋書きに沿って、「自宅に連れ込んでヤラシイことをしました、すみません」と言っていたのが、裁判の段階になって、「やってない」とか「自宅か周辺のどこだったか忘れた」とか言い出したのでしょう。

従来なら、被告人のどの供述に信用性があるのかという点について、詳細な、それこそミリ単位の議論を検察側・弁護側で戦わせることになるのだけど、裁判所側は「そんな時間はない」ということで、そこを曖昧なままにしてしまったのです。

裁判員が参加する裁判が始まれば、殺人事件でも3日や5日で審理するとのことです。
ミリ単位でなくセンチ単位で、素人でもわかりやすく、といった審理方針は、時としてこのように重要部分を曖昧なまま残してしまうことが懸念されるのです。
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舞鶴女子殺害事件について、もう少しだけ。

家宅捜索が先週末から始まり、今日もまた引き続き行なわれるらしい。
捜索の結果、自転車が出てきたとか(防犯カメラに映っていたものかどうかは不明)、情報は小出しにされていますが、凶器などの物証は出たのか、肝心なところは明らかにされていません。
(これは当然のことで、警察としては手持ちのカードを最初から公表しないといけない義務はありませんので)

最も注目すべきは、弁護士が家宅捜索に立ち会ったということです。
捜索をしてよいかどうかは、前回も書いたとおり、裁判官が令状を出すかどうかチェックしますが、弁護士に立ち合わせないといけない決まりはない。
私自身、刑事事件を受け持った際、家宅捜索に立ち会った経験はありません。

捜査の段階での行為(逮捕、勾留、取調べ、捜索、押収など)は、裁判官の許可のもとで警察・検察が行なうことで、弁護側は基本的に口出しできないし(準抗告という手はあるけどほとんど認められないのは前回のとおり)、立会いもできない。

それでも、あえてこの捜索に弁護士を立ち会わせたのは、京都府警がよほど「公明正大にやっています」ということをアピールしたいためであって、裏を返せばそれだけ「実はちょっと問題がなくもない」ということを京都府警自身がよくよくわかっているのでしょう。

見込み捜査の疑いも強いのですが、それでも、こういうケースがきっかけとなって、「問題となる余地を含む場合は弁護士を立ち会わせる」という慣行ができれば、捜査の行き過ぎを防ぐことができるかも知れません。

しかし、何日間もかかりきりで家宅捜索に立ち会わないといけない(その間、他の仕事ができない)というのは、一弁護士にとっては正直なところ大きな負担ではあります。

この事件には引き続き注目していきたいとは思いますがひとまずここまで。

前回の続き。
舞鶴の女子殺害事件で、60歳の男性の弁護士が、家宅捜索に対して準抗告をした。

「準抗告」というのは、裁判官の判断に対する異議申立てのことだと思ってください。
たとえば、被告人が有罪判決を下された場合、それに不服なら、高等裁判所に「控訴」したり、最高裁に「上告」したりすることができる。そういうものの一種です。

「抗告」って何だとか、なぜ準優勝みたいに「準」がついているのかとか、きちんと意味はあるのですが、長くなりますし、聞いても面白くない話なので省略します。

準抗告は刑事訴訟法という法律に定めがあり(429条)、
一番よく行なわれるのは、逮捕された容疑者にさらに10日間の「勾留」を裁判官が認めたときに、それに対して不服を申し出るというものです。
でも実際には、弁護側が準抗告をしたところで、棄却されて認められないことが大半です。

今回の事件ではどうだったか。
準抗告が出たということで、京都府警は捜索を取りやめにした。
法律上は、弁護士の準抗告が出たからと言って、すでに家宅捜索の令状が裁判官から出ているわけだから、取りやめにしないといけない決まりはない。

だからこれはたぶん、京都府警が慎重を期したのだと思います。弁護士の準抗告を押し切ってまで家宅捜索をして、それで何も証拠が出てこなかったら大失態のそしりを免れなくなることを恐れたのでしょう。

その後になって、弁護士からの準抗告は棄却されて、改めて裁判官から警察に家宅捜索の「お墨付き」が与えられました。

弁護士が争ったことは最終的にはハネられたわけですが、
結果的には、一弁護士のやった準抗告が、警察に慎重な捜査を促すきっかけとなったわけです。

私自身、弁護士として8年間、それなりに刑事弁護をやってきまして、「準抗告はやってもムダ」と思ってしまいがちだったのですが、改めてこの準抗告の重みを認識しました。
とはいえ私もこの事件に関してはヤジ馬なので、家宅捜索から何が出てくるのかはちょっと楽しみにしています。
京都・舞鶴の女子高生殺害事件で、発覚から約半年を経て新展開。

容疑がかかっている60歳の男性宅に家宅捜索(いわゆる「ガサ入れ」)が入ろうとしていたところに、その男の弁護人が「準抗告」をしたために捜索が延期されたと、昨日の夕刊に出ていました。
捜索現場を取材しようと張り付いていた報道陣には肩すかしであり、その京都の弁護士に「何すんねん」と思ったかも知れません。

この事件、いま何が問題になっているかについて書きたいと思います。

この60歳男性は、女子殺害とは全く関係のない窃盗事件(賽銭泥棒)で逮捕されており、それについてはすでに起訴されて刑事裁判が始まっている。小室哲哉みたいに保釈されていなくて、今でも拘置所か警察署で勾留されています。

しかしこの、賽銭泥棒で逮捕したというのが、すでに「別件逮捕」であるニオイがする。
つまり、最初から女子殺害(殺人罪)の容疑で睨んでいたが、証拠もないから裁判官は逮捕状を出さない。そこで、容疑の固まっている賽銭泥棒(窃盗罪)という「別件」で逮捕しておいて、「お前、殺しもやってるやろ」と追及し、口を割らせようというわけです。

このような「見込み捜査」に基づく別件逮捕は違法とされています。
もっとも、これは容疑者・弁護人側の論理であり、警察側はきっと、「賽銭泥棒はれっきとした犯罪だから逮捕したのだ。その過程でたまたま殺しの疑いが浮上しただけだ」と言うでしょう。

しかしこのような手法がまかり通るなら、冤罪による逮捕が頻発します。
皆さんだって、たとえば駐車違反か何かで突然逮捕されて、「何でそんなことで」と思っていたら、取調室の密室で身に覚えのない殺人事件をあげられ、「犯人はお前やろ」と追及される可能性があるとすると、恐ろしいことでしょう。

これが違法な別件逮捕か否かはともかく、いずれにせよこの男性には殺人罪の逮捕状は出ていない。そこで容疑を固めるために、先に家宅捜索をして、証拠品を差し押さえようというわけです。

捜索するにも裁判官の「捜索・差押令状」が必要です。
裁判官が、それくらいは認めてもよかろうということで、その令状を出した。
それに対して、弁護人が異議申立てをした。それが今回の「準抗告」なのです。

と、準抗告のことで書こうと思っているうちに前置きが長くなったので、次回に続く。
小室哲哉が保釈されて大阪拘置所から出てきました。保釈保証金の金額は3000万円だそうです。
この保釈と保証金について書きます。

何らかの犯罪の容疑で逮捕され、その後、取調べの必要があると判断された場合は、「勾留」(こうりゅう)されることになる。期間は10日間ですが、1回は延長がきくので、たいていの場合は20日間は勾留される。

20日間の取調べを経て、検事が刑事裁判に持ち込もうと判断すると、その事件を起訴することになります。
起訴されるとだいたい1か月後くらいに刑事裁判が始まるのですが、取調べはいちおう終了しているので、もはやその被告人を勾留しておく必要はなくなる。

そこで、「後日の裁判の際にはきちんと法廷に来てくださいよ」という条件のもとに、被告人を出してあげるのが保釈です。
ただ、保釈してそのまま逃亡されると困るので、お金を出させて、「逃げたら没収しますよ」ということで裁判所がいったん預かる。それが保釈保証金です。

きちんと裁判を受ければ返してくれるのですが、いったんは現金で預けないといけないので、お金がないと保釈もしてもらえない、というわけです。

小室哲哉の場合はその金額が3000万円とされました。
最近の有名なところでは、村上ファンドの村上は5億円、ライブドアの堀江は3億円だったかと記憶しています。

この金額はどうやって決まるかというと、簡単に言えば、事件の大きさと、逃亡の可能性と、その人の財力で決まることになります。
もっと具体的にいうと、保釈するか否かを判断する裁判官と、その被告人の弁護士との「交渉」で決まります。

私はさすがに、何千万とか億単位の保証金を納めたことはありません。一般的な刑事事件なら、200万円前後ではないかと思います。

担当の裁判官と、面談または電話で話して、
裁判官「保釈金はどれくらい用意できそうですか」
弁護士「本人も決して裕福ではありませんので、何とか100万円くらいで…」
というふうに値切ることもよくあります。

お金がなくて詐欺を行なった小室哲哉ですから、保釈保証金なんて準備できないのではないかと思っていたのですが、どこかから用意してきたのでしょう。

それにしても、5億円という巨額を騙し取ったという事件の大きさからすると、3000万円という保釈保証金は正直「安いな」と私は思ったのですが、きっと弁護士が相当に値切ったのだろうなと思います。そして小室哲哉も一時のことを思えば経済的に相当苦しいのだろうなと想像しています。
厚生労働省の元事務次官を狙ったと思われる死傷事件が起こりました。
犯人と、その動機についてはまだ未解明の部分もありますが、おぞましく、そして憎むべき事件です。

厚生行政に恨みがある人の犯行であるのかどうかは知りません。
厚生労働省と旧厚生省の政策については、最近の年金問題や薬害問題その他、諸々の批判があるのも事実でしょう。
しかし、そのことと、人を殺すことは全く別問題です。

今日(19日)、夜のニュースで「街の人の声」というのがいくつか流れていましたが、
「ここまでの事態にしてしまった政治の責任は重いと思う」
という趣旨の発言をする人が複数いて、私個人としてはとても嫌な気持ちになりました。

厚生労働省のお役人のやることだから「政治」部門の問題でなくて「行政」部門の話だろうとか、そういう些細なことはどうでもよい。
卑劣な犯罪が起こったときに、それを安易に社会や政治のせいにしてしまう考え方が恐ろしいです。

かつて当ブログでも取り上げたかと思いますが、私が筑波大学在学中に、イスラム学の学者で「悪魔の詩」(マホメットを冒涜しているとされた書物)を翻訳した五十嵐一助教授が学内で殺害されました。
そのニュースに接したいわゆる「文化人」がテレビで
「イスラムに対する理解が足りなかったのではないか」
と言ってしたり顔をしているのと同じような嫌な感じを受けます。

法治国家であるこの日本においては、どんな理由であれ、暴力で言論を封ずるとか、気に入らぬ政治・行政に暴力で報いるとか、そういうことがあってはならないのです。
まだまだわからないことが多いこの事件ですが、そのことを改めて強く感じました。
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