忍者ブログ
大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
[121]  [120]  [119]  [118]  [117]  [116]  [115]  [114]  [113]  [112]  [111
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

少し前に新聞に出ていて、大した話題にならずに終わった事件について触れます。
岡田外相が、国会開会の際の天皇陛下の「お言葉」について、「もっと心のこもったものにしてほしい」と、宮内庁の人たちに注文をつけたとか。

お言葉とは、国会の開会にあたって、天皇陛下が「国民の負託に答えるよう期待します」などと(本当はもう少し長いけど)述べるものです。

弁護士のクセとして、何でも「法的根拠」を考えてしまうのですが、このお言葉には、法的根拠はありません。
ご存じのとおり天皇は日本国の象徴であり(憲法第1条)、内閣の助言と承認に基づいて一定の「国事行為」(同7条)を行う存在とされていますが、国事行為の中に「お言葉」は書かれておりません。

これはおそらく「慣習」によるものです。
明治時代の天皇は「主権者」であり、明治憲法では、国会の作った法律は天皇の裁可(OKサイン)がないと成立しなかった。そのため天皇が国会に出て「ひとつがんばって、朕の裁可に足る法律を作りなさい」とお言葉を賜るのは、おそらく当然のことと考えられたのでしょう。それが今でも残っている。

さて、そのお言葉に「心を込めろ」というのが岡田外相の言い分ですが、果たしてそれが良いことなのか。
その天皇陛下のお言葉が問題とされたケースとして、こういったものがあります。

戦後、日本が占領状態を脱し独立を回復する法的根拠となったのは「サンフランシスコ講和条約」(1951年、昭和26年)ですが、これはアメリカや西ヨーロッパの「西側諸国」とのみ締結した「単独講和」でした。
当時の社会党など左翼の人たちは、ソ連や東ヨーロッパや中国など「東側諸国」も含めて「全面講和」をすべきだと主張し、世論も割れていた。

吉田内閣は現実路線をとって西側諸国との単独講和を結びました(結果的に、西側と仲良くしておくことによって、日本が経済的に発展できたのです)。
その直後の国会で、昭和天皇が「講和条約の成立を嬉しく思います」という趣旨のお言葉を述べられました。

これは単に、日本の主権回復を祝う意味であったと思われますが、ひねくれた根性の人たちは「全面講和でなく単独講和を祝っている、つまり天皇は吉田内閣を支持し、社会党の考え方を否定している」と受け取った。
日本国全体の象徴である天皇が、時の内閣を支持するとか、反対政党を支持しないとか、そういう言動をしてはならんじゃないか、と問題視したわけです。

かように「講和を祝う」と言っただけで一部勢力の人が騒ぎ立てるのですから、天皇陛下のお言葉がどうしても平板になるのはやむをえないのです。

岡田外相はまさか「政権交代を嬉しく思う」などと言わせようとしたわけではないと思いますが、天皇陛下に何を求めたかったのか、意味のよくわからない進言でした。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
お知らせ
一時的に戻ってきました。 左上に「裏入口」という小窓が出てくるかも知れませんが、当ブログとは関係ありません。おそらくアダルトサイトへの入口なので、クリックしないでください。
現在の来訪者数
ブログ内検索
アクセス解析
忍者ブログ [PR]