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大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
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 尖閣諸島沖での衝突事件の映像が流出した件で、政府・民主党は「犯人」探しを始めるとともに、罰則の強化を検討し始めたようです。

流出が海上保安庁の内部の人によるものかどうかは知りません。しかし現場付近では以前から、漁業で生計を立てている人たちが中国船に悩まされ、海上保安庁が文字通り命がけでそれを排除しようとしたわけです。

画像流出の「犯人」を処罰しようというのであれば、民主党があれだけ「国民の生活が第一」、「命を守りたい」などと言ってきたのと全く矛盾すると思うのですが、もしかしたら民主党の言うところの「国民」や「命」とは「中国人の」ことだったのかも知れません。

それはともかく、政府・民主党は、画像流出が「国家公務員法の守秘義務に反する」と言っているようなので、法解釈的にそう言えるのか否か、検討してみます。

国家公務員法によると、公務員は職務の上で知った秘密を漏らしてはならないとされており(100条1項)、これに反すると、1年以下の懲役または50万円以下の罰金とされます(109条12号)。

公務員にも、言いたいことを言うという表現の自由はあり(憲法21条)、それに対応して国民にも知る権利があるのですが、国益に関する高度な判断について、ある程度は「国家機密」が生じるのはやむをえません。

極端な例で言えば、ある検察官が、この容疑者はこんなにひどいヤツなんだということを世間に喧伝しようと思って、被害者の死体写真をインターネットでばらまくのも自由だということになれば、かなりおぞましい事態だと思います。だから一定の守秘義務は必要です。

では、守秘義務によって守られるべき「秘密」とは何か。
この点は、時の政府が「これは秘密にしておきたい」と思うだけでは足りず、またファイルやビデオテープに「マル秘」のハンコが押してあるだけでも足りません。

最高裁(昭和52年12月19日決定)は、「実質的にもそれを秘密として保護するに値すると認められるもの」でないといけないと言っています。

秘密として保護に値するものとは何かというと、そこから先は事件ごとに考えるしかないのですが、憲法の教科書などによれば、「非公知性、必要性、相当性」の要件が必要とされています(佐藤幸治「憲法」)。

もともと一般国民が知らないことで、国益のため秘密にする必要があり、刑罰をちらつかせてまで秘密を守ることが相当な情報、それが国家の秘密であるというわけです。

今回の衝突事件の映像が、この要件にあてはまるか否かについては、考え方は分かれるかと思います。心情的には、映像を流出させた人には「よくやった」と言いたいですが、法解釈として無罪と言ってよいかについては、私の考えがまだまとまっていません。そのあたりは、次回以降に書きたいと思います。
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