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大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
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米兵の子供の少年たちが道路にロープを張って、バイクで通行していた女性が転倒し大ケガした事件で、警視庁は4人の少年を逮捕したとか。
 
この事件、米側が一時少年の身柄引渡しを拒否したという、国際法的、政治的な問題も含んでいますが、ここでは、少年たちのしたことが本当に殺人未遂にあたるのか否かという点について、純粋な法解釈の問題として述べてみます。
 
殺人未遂とは、他人に対する殺意を持って、人を殺害する行為を行ったが、結果として人が死ななかった状態を言います。
 
車の往来する公道にロープを張るなんて、常識ある人が見ればきっと「そんなことして人様が死んだらどうするのっ!」と怒るであろう危険な行為であり、少年たちだって、そんなことくらいわかっていた。
しかし、だからといってこれが殺人未遂にあたるかというと、疑問を感じます。
 
私が知っている実例では、こんなケースがあります。
とあるマンションの高層階に住んでいる男性(成人)が、気分がムシャクシャして、隣家の屋根に大きな石を投げ落とした。石は民家の屋根を突き破り、その床まで落ちた。
幸い、屋根の下に人はおらず、ケガ人はいなかったのですが、警察はこの男性を殺人未遂罪で逮捕した。
 
しかしその後、検察はこの事案を単なる「建造物損壊罪」で起訴しました。担当の検事は、「殺意」や「殺害行為」まで認められないと考えたのでしょう。
 
何を持って刑法上の殺意や殺害行為と捉えるかという議論までは触れませんが、少なくとも、殺人罪や殺人未遂罪の責任を問うためには、「そんなことして人様が死んだらどうするの」という程度の行為では足りず、もう少し明確で具体的な生命への危険を要すると解されます。
 
では、冒頭のような行為は、どのように裁かれるべきか。
本件は少年法が適用されますから、成人のケースとは異なってきますが、これが成人なら、往来危険罪(刑法124条、2年以下の懲役)と傷害罪(204条、15年以下の懲役)を適用して、上限で懲役15年まで科することができるので、それなりに重い処罰ができる。
 
一方、殺人未遂だと、適用される条文は殺人罪(199条、203条)で、いちばん重くて死刑。「未遂」というのは「軽くしてやっても良い」というだけなので(43条)、当然軽くなるわけではない。本件は冷静に考えて、死刑を含めて検討すべきほどの事案であるとは思えません。
 
米兵の子供らのしたことは、間違いなく悪質な行為であり、個人的感想としては「やはりヤンキーはアホ」と私も思うのですが、だからと言って「殺人」の解釈を緩やかにすることを認めてしまうと、いずれは私たちにそれが跳ね返ってきます。
たとえば、皆さんが車を運転中にエンストして、仕方なくその場に車を止める行為だって、殺人未遂になりかねないのです。
 
この事件を、検察はどう扱うかは知りませんが、私の解釈では、殺人未遂ではなく、往来危険罪プラス傷害罪でよいと考えています。
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