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大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
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地味な記事ながら、弁護士として興味深かった事件です。
神戸地裁での裁判員裁判で、弁護人の「最終弁論」に検察官が「異議」を出したらしい。

強盗傷害罪の事件で、弁護人は「被告人の供述調書は、警察官の作ったストーリーに沿ったものだ」という趣旨の弁論をしたところ、検察官が「異議あり」と言った。裁判官はその異議を認めて、弁護人は弁論のその部分を撤回することになったそうです。

刑事裁判の最後には、検察官が「被告人には懲役何年が相当だ」という「論告求刑」を行い、そのあとに弁護人が「無罪だ」とか「執行猶予を」などといった「最終弁論」を行います。
このとき弁護人は、被告人をかばうためなら何を言っても良いというわけではなく、きちんと「証拠」を根拠にして言わないといけません。

上記の弁護人は要するに、「やったこと自体は認めるけど、供述調書は警察官の言うままに被告人が誘導されたため、被告人が実際以上に悪人に書かれている」ということを言いたかったのです。
しかしそれなら、裁判の最初の段階で、「調書には信用性がない」と主張した上で、調書を作った警察官を証人に呼んできて、その作成経過を証言させるなどする必要がある。

それをせずに、最後になって唐突に、証拠のどこにも載っていない、法廷で誰も証言していないようなことを言いだすのは、検察に対する不意打ちであって認められないのです。

だから私自身も、審理が1日で終結する事件では、最終弁論の準備には慎重になります。
事前に最終弁論の内容を書いた書面を作っておくのですが、法廷で被告人が、打合せのときとは異なる弁解をした(こちらが予定していた証言をしなかった)ため、検察官が論告求刑を読み上げている間に、手元で書面をこっそり訂正することもあります。

書類はもちろんパソコンで打ち込んでいるので、ボールペンで訂正すると、「うまく証言が引き出せなかった」ということが検察官と裁判官にばれてしまうのですが、それでも、証拠にないことを弁論して「異議あり」と言われるよりはマシです。

もっとも、実際には、弁護人が証拠から少々はずれたことを言っても、検察官があえて異議を出すことはあまりないように思えます。弁護人がテキトーな弁論を行っても、プロの裁判官がそれに引きずられて判決を誤ることはありえないですから。
(ちなみに私も、最終弁論で異議を出されたことはありませんが、それは私がちゃんとした弁論をしているためなのか、検察官が見逃してくれているためなのかは知りません)

今回、検察官が異議を出したのは、やはりこれが裁判員裁判だからでしょう。裁判員はプロじゃないから、弁護人の言ったことに引きずられることを懸念したわけです。

従来のプロ同士の刑事裁判なら、弁護人が言いたいことを言ってもある程度は許される部分はあったように思いますが、今後は「セオリー通りにやらないと異議が出される」ということで、良い意味での緊張感が法廷にもたらされるのではないかと思います。
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