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大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
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東京高裁が公務員の政治活動に無罪判決(29日)。
 
事案は、社会保険事務所に勤務する職員が、休日に、共産党の機関紙である「赤旗」を配布した行為が、国家公務員法に触れるか否かが争われていました。
 
国家公務員法と人事院規則によりますと、公務員の政治活動はすべてと言ってよいほど禁じられています。
最高裁の判例としては、昭和49年の「猿払事件」が有名で、行政が政治的に中立性を保ち、これに対する国民の信頼を確保するために、公務員の政治活動を法律で禁じて一律に処罰することもやむをえない、と述べています。
 
ちなみにこの事件は、北海道の猿払村というところで、ある郵便局員が、勤務時間外に、衆議院選挙が行われる際に(旧)社会党のポスターを貼る仕事をしたというものでした。この人に対する判決は「罰金5000円」で、高くはないとはいえ、立派な有罪判決です。
 
この最高裁判例には憲法学者からの批判が多いです。
 
たしかに、公務員というのは、政権の担当者が誰であれ、法律で決まったことを執行していく立場にあり、たとえばある公務員が「民主党は嫌いだからウチの役所では子ども手当は支給しない」などと言いだすと困る。だから行政は特定の政党に偏らず、中立でないといけない。
しかし、公務員にも言論の自由はあり、末端の役人が、役所での勤務と関係なくポスターを貼ったりする行為までも漏れなく処罰するというのは、行き過ぎとも思える。
 
今回の東京高裁判決は、1審で罰金10万円とした判決を破棄して無罪とした。
いわく、猿払事件の最高裁判決の後、言論の自由に対する国民の意識は変わってきている、一律処罰でなく、処罰されるべき範囲が検討されるべき時代がきている、とのことです。
 
テレビのコメンテーターなどがよく、ある問題について発言を求められて、「この問題についてよく考えないといけない時代がきていると思います」と、それ自体は何の中身もないことを述べ、したり顔をしているのを見かけますが、この東京高裁の判事は、自分たちのトップである最高裁に「考え直せ」と言っているわけですから、体を張っています。冷や飯覚悟の判決でしょう。
 
この無罪判決に対し、検察側は最高裁に上告するでしょうから、高裁の問題提起に対して最高裁はどう答えるかを注目したいと思います。
 
私の見解はどうでも良いでしょうけど、ごく個人的には、役所の人間が共産主義政党に肩入れした活動をすること自体、お国の仕事を任せておけるのかといった不安を感じなくもないので、処罰されても仕方ないのかな、と思っています。
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無題
勤務時間外、というのが大きいと思います。勤務時間外には、公務員も民間人もありませんからね。
よしだ 2010/03/31(Wed)08:29:23 編集
こんにちは。
ご指摘ありがとうございます。

この処罰規定の保護法益は、行政の中立性の確保とそれに対する国民の信頼であり、その侵害の抽象的危険性ゆえに処罰するのだと思われます。

その抽象的危険性が、公務員が休日に赤旗を配っただけで発生するのかは確かに疑問であり、私の書いたような「そんな人にお国の仕事を任せてよいか不安」といった程度では、抽象的危険性すら発生していないとも言えそうです。特に、結果無価値論者ならそう言うでしょう。

いずれにせよ、一律処罰でなくて議論が深化すること自体は望ましいことと思えます。最高裁の判断が待たれます。
山内 2010/03/31(Wed)13:35:58 編集
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