大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
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当ブログでは基本的に芸能ネタは取り扱いませんが、面白かったので触れてみます。
テレビの芸能ニュースで見たのですが、ナントカいう女優が、日本の芸能事務所をクビになり、今度、スペインに個人事務所を作って芸能活動を再開させるのだそうです。
その女優に取材するためには、事前に「同意書」にサインを求められる。その同意書には、誹謗中傷を書かないこと、もし書いたらスペインの裁判所で裁判すること、などが掲げられているらしい。
この笑わせてくれる同意書について、法的に有効なのか否か、検討します。
まず、誹謗中傷を書かないという点。ここは、効力があるともないとも言える。
もともと、他人に対し誹謗中傷を行うと、名誉毀損となって民事上も賠償責任を負うし、刑法上も犯罪になる。
だから、この女優に限らず、人さまを誹謗中傷してはいけないというのは、法律で定められているためであって、同意書にサインするゆえではないのです。
また、何をもって名誉毀損となるかは、言われた本人(女優)が決めるのではなく、裁判所が社会通念にのっとって決める。ですから、同意書にサインしたところで、公正な報道や批評の範囲であれば、違法となるわけではない。
次に、スペインの裁判所にて裁判するという点。これには効力があります。
互いに遠隔地にいる当事者が取引するとき、何か問題が起こったときには裁判所をどこにするかということは、事前に合意で決めておくことができる。これを合意管轄といいます。
日本の出版社とスペインの芸能事務所が国際的な契約をする際に、その一方の国の裁判所を合意管轄で決めておくことも認められる。
では、その女優の気に触る報道をしてしまったら、スペインの裁判所に行かないといけないのかというと、必ずしもそうではありません。
日本にも「主権」というものがある以上、スペイン国内で出された判決が、日本国内で当然に通用するわけではないからです。
仮にスペインの裁判所が日本の出版社に「賠償金を1000万円払いなさい」と命じたところで、日本国内では強制執行できないので、取り立てることもできない。
外国の判決が日本国内で通用するためには、日本の裁判所での「承認」という手続きが必要なのです。
だから、スペインの裁判所から訴状が送られてきても放っておいて、日本の裁判所での承認の際に出ていけばよい、ということになります。
日本の裁判所での承認がない場合、スペイン国内では判決が通用しますが、それで困る日本人はほとんどいないでしょう(スペインに不動産や預金を持っていると差し押えられるかも知れませんが、それほどのお金持ちなら弁護士に頼んで何とかできるでしょう。また、スペインに旅行することは自由にできます。)
それに何より、そもそもスペインだって日本と同じ立憲国家ですから、女優がどんな裁判を起こそうと、表現の自由を無視したような無茶な判決は出さないはずです。
ということで、この女優の今後の活動には興味ないのですが、スペインの裁判所で裁判を起こしてくれたら面白いなと、そこだけは非常に興味があります。
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