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大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
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刑事裁判と被害者参加制度について、2つの事件に触れます。

被害者が公判に参加した刑事裁判で、有罪の実刑判決が出た(札幌地裁、10日)。
悪天候下でボートを運転していて同の者を転落させ水死させてしまったという、業務上過失致死の事案です。被害者の父が法廷に参加し、被告人に対して「どう償うつもりなのか」といった質問をし、裁判官に対しては実刑を求める意見を述べたそうです。

判決は、執行猶予ではなく禁固1年6か月の実刑。被告人は刑務所に行くこととなった。
これを被害者参加制度の成果だ、と捉える向きもあるかも知れません。しかし、人ひとり死んでいるわけだし、報道によると被告人は謝罪や賠償をきちんと行っていなかったようなので、もともと実刑判決が下ってもおかしくない事案だったと思われます。

過去にも書いたとおり(過去の記事)、被害者が参加することによって罪が重くなるとすれば(それは反面、被害者が参加しなければ罪が軽くなることを意味する)、制度としてはどうかと思っています。

被害者が法廷に出るか否かは、被害の大きさと必ずしも比例するわけではないからです。
大きな被害を被っても、裁判を静かに見守る人もいるし(私が接した犯罪被害者のほとんどはこのタイプです)、その逆、つまり被害のわりには声だけ大きい被害者も、少数ながら確かに存在する。
この話はすでに論じたので、ひとまずこの程度にします。

もう一つの話題。
東京地裁で、傷害事件の被害者女性が法廷で事件の感想(つまり被害者感情)を述べたところ、逆に被告人からなじられて号泣した、といったことがあったようです。

この一件はまさに、被害者参加制度の問題を浮き彫りにしています。
すべての被告人が、被害者の前で、うなだれて神妙にしているとは限らない。
「俺は無罪だ」などと反撃されるかも知れない。上記事件の被告人は「お前たちは呪われるぞ」と言ったそうですが、事件の内容と関係なく罵られることも考えられる。

そんなとき、検察官や弁護士なら、即座に反論して切り返すことができるでしょう。そういう訓練を受けているし、そもそも何を言われても平気な人じゃないとこの商売は成り立たないからです。でも一般の人はそうは行かない。

被告人がそんな態度に出れば、情状が悪くなるでしょうから、ある意味、被害者参加の目的は達しうるかも知れないのですが、被害者としてはきっと精神的ショックを受けるでしょう。

上記2つの事件から、改めてこう思います。

被害者は裁判に参加しなくても、おそらく適切な判決が下されると思う。だから、法廷なんか出たくないという被害者は、裁判所に任せておけばいい。
一方、法廷に出たい人は、それは被害者の権利であるから堂々とやってよいのですが、やるならそれなりの覚悟を持って、できれば自身の弁護士と入念に打合せをした上で、法廷に望むべきでしょう。
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