大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
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前回の続き。
京都地裁は、顔の傷への補償について、男女全く同じであるべきだと考えたのか。
このあたり、判決文そのものを読んでいないので、正確にはわかりません。
ただ裁判所がこの問題を検討するにあたっては、「果たして男女の差をどこまで認めていいか」という抽象的な議論をしたのでなく、「当該事案についてその当事者にどこまで不都合が生じているか」を考えたのは間違いない。
新聞報道によりますと、この事件の原告男性は、顔などに火傷あとが残って、労災保険法の定める障害等級で「男性の外貌に著しい醜状を残す」として12級と認定された。これが、「女性の外貌に著しい醜状を残す」場合は、等級が5つ上がって7級とされています。
具体的な違いは、12級の場合に得られる補償は、「年収の約半分」の一時金です。7級だと、「年収の約3分の1」ですが、これが年金として以後毎年、支給されます。原告の男性は35歳で、これから何十年の人生があるだろうから、得られる労災給付は、7級か12級かで大きく異なる。
今回、京都地裁の裁判官が違憲判決を出すにあたって、間違いなく念頭に置いていたであろうと思われる最高裁の判例は、憲法をかじった方なら誰でも知っている「尊属殺重罰規定」違憲判決(昭和48年4月4日)です。
昔の刑法の規定では、通常の殺人罪は3年以上の懲役か死刑で、ただし親など尊属を殺した場合は、無期懲役または死刑という厳しい刑罰が定められていた。
その時代に、ある父親が、自分の娘に対し長年に渡る性的虐待を行い、思い余った娘が父を殺害して、自首したという事件がありました。
尊属殺人ですから最低でも無期懲役。とはいえ情状酌量などの条文をあてはめて、懲役3年半までに軽くしてあげることはできるのだけど、執行猶予にはできない。懲役3年を超えると、執行猶予にできないと刑法で決まっているからです。つまり、どんな悲惨な状況で親を殺したとしても、3年半は必ず刑務所に行かないといけなかった。
この規定を違憲とした最高裁はこう言いました(以下要約)。「子が親に対し尊重報恩の念を持つべきであるのは当然のことだから、尊属殺人を普通殺人と別に扱うこと自体は構わない。しかし、それにしても尊属殺の場合は刑罰が重すぎる。これは子を親との関係において不当に差別するものだ」と。
今回の京都地裁も、同じ論理をとっているのではないかと想像しています。
つまり、顔の傷への補償について、男女全く同じに考えるべきだ、とまでは言っていない。
適切な男女差はあって然るべきである。しかし、現在の労災保険法は、同じケガでも、男性なら一時金、女性なら一生に渡る年金としており、落差が大きすぎる。
顔の傷によって受ける活動の制約や、精神的苦痛において、男女差はあるだろうけど、この支給額の落差を正当化できるほどの差はない。差はあってもいいけど、その差が大きすぎる、という判断だと思います。
この判決についてもう少しだけ続く予定。
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