大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
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明石の歩道橋事故(平成13年、花火の見物客が死亡)で、神戸の検察審査会が、検察が不起訴処分としていた当時の明石署の副所長を「起訴すべきだ」と議決し、業務上過失致死罪で強制的に起訴され、刑事裁判が開かれることとなりました。
検察審査会とは、なじみが薄いですが、簡単に言えば裁判員制度に似ています。
といってもこちらは昭和20年代からある制度で、国民から無作為に選ばれた11人の委員で構成され、起訴されるべき事件であるのに検察が起訴しなかったとき、起訴すべきだと議決して申し入れる。
起訴する・しないを決めることができるのは、検察官だけです。そして検察官が適切な起訴を行っているかを審査するのが検察審査会の役目なのです。検察といえども主権者である国民の監督下に置かれるという建前です。
ちなみに裁判員制度と同じで、検察審査会のほうも、突然通知が来るのだそうです。
しかし、ごく最近までは、検察審査会の議決には何の強制力もなかった。検察審査会が「起訴すべきだ」と申し入れても、検察は「ああそうですか」と聞くだけで良かった。
ところが、近年の検察審査会法の改正で、その議決に強制力が与えられることになった(その要件や手続きの詳細は省略)。裁判員制度と同じく、司法改革の一環として、一層の国民参加が図られたのです。
検察が「起訴しない」と言っている事件を強制的に起訴するとして、誰がその刑事裁判を担当するのかというと、弁護士です。
今回の事件では、兵庫県弁護士会の推薦に基づき、裁判所が検察役の弁護士を選任することになるでしょう。
少し話変わって、弁護士が刑事事件で検察官役を務めるという制度は、実は昔から存在しています。
刑事訴訟法には「準起訴手続」というものがあり、公務員が国民の人権を侵害した場合(たとえば警官の暴行事件など)、検察官は役人同士の仲間意識から、その犯人を起訴しないことがある。その場合、被害者の申立てを裁判所が認めた場合に、刑事裁判が開かれるというものです。
調べてみますと、戦後現在の刑事訴訟法ができてから、現在までの間に、17件の準起訴手続が行われたようです(田口守一「刑事訴訟法」。平成17年までのデータです)。
このように、弁護士による刑事裁判は、戦後60年以上経った今も、全国の裁判所で17件しか行われていないので、弁護士会としてもノウハウが蓄積されていないでしょう。
ですから今回のようなケースでは、刑事事件に相当強い弁護士が選ばれ、検察側も資料をきちんと引き継ぎするなどして協力することが求められます。
ただ、刑事事件に強い弁護士と言っても、元検察官の弁護士(いわゆるヤメ検)だと、古巣である検察が起訴しないと言っている事件にどこまで本気で取り組んでくれるかという疑念が生じますし、かと言ってバリバリの刑事弁護のすご腕の人だと、検察とはいつも対立しているわけだから、検察がきちんと協力してくれるかといった心配もあります。
新制度の下、不安な部分もありますが、この裁判の進行には注目したいと思います。
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