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大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
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今朝の朝刊から、大阪府政にからむ一件。

吹田市の府立児童文学館、大阪府は橋下知事の方針のもとでその廃止を進めているのですが、設立に際して1000冊以上の児童書を寄贈した児童文学者らが、
「文学館を廃止するなら本を返してくれ」と大阪府を提訴したらしい。

さて、児童文学者らの訴えは認められるのか。財政削減のため廃止はやむをえないとか、文学者がかわいそうだとか、橋下知事が好きか嫌いかとか、いろいろ意見はあるでしょう。

ただ私たち法律家がこういった問題を考える際の思考方法は単純明快です。
すなわち、原告の児童文学者に「本を返せ」という「法的根拠」があるか否か、そしてその前提として文学者と府の間にいかなる「契約」があったのか、で決定します。

まず、お金を寄付やモノを寄贈というのは、民法上の「贈与」契約に該当します。これは「タダであげます、あとはアナタのいいように使ってください」という契約です。
だから児童文学者はいったんあげた本の使い方に文句をいえない、という解釈もありうる。

しかし、贈与契約にも、一定の「条件」をつけることができる。これを「負担付き贈与」といいます。
よくあるのは、身寄りのないお年寄りが、若い親族や愛人に、身の回りの世話をしてくれるということを条件として、自宅その他の財産をあげる、という場合です。
この場合、身の回りの世話という「負担」(条件)を果たさないと、「債務不履行」(約束違反)ということになって、契約を解除し、あげたモノを返せと言えることになる。

児童文学者と府の間でも、「吹田市の児童文学館を存続させてそこに本を保管する」ということを条件とした負担付き贈与が成立したと解釈できれば、契約違反だ、本を返せ、という法的根拠が発生する。

おそらく、児童文学者と府の間で、これは負担付き贈与ですよ、と明確に書いた契約書が存在するわけではないでしょう。あとは、寄贈した当時に「児童文学館に保管し続ける」という暗黙の合意を見て取ることができるか否かという、双方の意思の解釈の問題になってきます。

意思の解釈は、当人が主観的にどう思っていたかということよりは、当時の客観的状況や、常識とか社会通念といったものから決められる。

話のレベルは突然落ちますが、たとえば女性に振られた男が逆上して「これまでおごったメシ代を返せ」ということがあります。これは明らかに認められません。その男がどう思っていたかは知りませんが、食事をおごられる際に、「この男に一生添い遂げることを条件とした贈与なのだ」と解釈する女性は常識で考えて存在しないからです。

今回の事件でも、本の寄贈がなされた客観的状況を前提に、単純な贈与だったのか、条件つきだったと認定してよいのか、そういったことが判断されることになると思われます。
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