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大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
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司法改革と法科大学院のことについて私の考えを書くといいつつ、そのままになっていましたので続きを書きます。

私が11年前に受けた司法試験は、今や「旧司法試験」と言われています。
旧試験はいわゆる「一発試験」で、一発と言っても、5月のマークシート試験、7月の論文試験、10月の口頭試験と3つをパスしないといけないのですが、とにかく1年のうちこれらに受かれば、「司法研修所」に入れてもらえる。そこで1年半から2年間の研修を経れば、よほど出来の悪い人でない限り、弁護士になれる。

今の「新司法試験」では、そもそもの受験資格を得るために、法科大学院に2年か3年通う必要がある。法科大学院に入るにももちろん、入試がある。旧時代は受験資格に制限がなかったのが、少し面倒なプロセスを踏む必要が生じたわけです。

「改革」の理由はいろいろありますが、よく言われるのが「旧試験時代は、一発試験を突破するためだけの知識の詰込みが行われていた」ということです。
主に受験予備校で行われていた「詰込みの弊害」を除去し、法科大学院に入れてじっくりとホンモノの法教育をするということのようです。

私自身は旧試験を受けたわけですが、知識の詰込みは、確かにしました。
六法(憲法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法)の全分野に渡り、用語の定義や、裁判所の判例や、条文解釈に関する学説について、試験本番のときにどこをどう聞かれても即座に答えられる状態にしないといけない。

私が司法試験に受かるために費やした勉強期間は約2年です。
「その間、1日にどれくらい勉強しましたか?」と今でも受験生によく聞かれますので、そのときは「だいたい9時間か10時間です」と答えていますが、白状しますと、これは受験生にショックを与えないよう少なめに言っているのであって、本当は1日に12時間くらい勉強していることもザラでした。

司法試験に受かった人は、ほとんど同じようなことをしているでしょう。ではそのことが、何らかの弊害をもたらしたと言えるか。
顧客のお金を横領するなど、不祥事を起こす弁護士はたまにいますが、「受験期の詰込み教育が原因」でそうなったようなケースはないはずです。

「受験勉強に長期間を費やすために人間味や社会性が失われる」ともよく言われますが、それは制度というより個人の問題でしょう。まともな人間だってたくさんいます(私もその一人と思っています)。

受験期間が長くなるという点では、現在の新制度だって、法科大学院で最低2年は費やさないといけないわけだから、そう変わるものでもない。新試験の合格率も当初予定していたより低いので、その期間中、受験生はみな、相当程度の詰込み型の勉強をするでしょう。

そういうことで、司法試験における「詰め込みの弊害からの解放」というのは、今や否定されつつある小学校の「ゆとり教育」と同じで、実態はどうであるかという検証が何らなされないままに、一部のエライ人が頭の中で勝手に想像していただけのものであると信じています。

この問題、休み休みながら、引き続き何度か書く予定です。
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無題
そうですね~専門家なんだから、専門知識をまず、詰め込んでおかないと話になりませんね~
政治家じゃないんだから、独創性は必須ではないと思います。
よっちゃん 2009/04/09(Thu)18:39:45 編集
毎度どうも。
私もこの話の続きで、知識は詰め込んでおかないと使いものにならない、という話を書くつもりでした。

専門家はまさに、詰め込んだ知識で食っていくわけでして、詰込みイコール悪、という発想自体がどうも腑に落ちないです。
山内 2009/04/10(Fri)17:55:25 編集
無題
そうそう、問題は、詰め込んでから、詰め込んだだけで終わるのか、独創性を発揮できるかどうかなのだと思うのですよね。
よっちゃん 2009/04/15(Wed)10:59:44 編集
そうですね。
詰め込んだだけで終わっても、私たちの仕事はほぼ差し支えない。
考えてみれば、詰込みなしで独創性だけ発揮してできる仕事って、ないような気がします。
山内 2009/04/17(Fri)08:04:20 編集
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