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大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
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電車内での痴漢事件に最高裁が逆転無罪判決(14日)。

新聞、テレビで大きく報道されたので、皆さんご存じだと思います。
電車内で女性の体に触ったとして強制わいせつ罪で1・2審で有罪とされた大学教授に対し、最高裁は、被害女性の供述に信用性がないとして無罪判決を下した。

痴漢事件の審理の難しさ、微妙さが浮き彫りになったと共に、ホンモノの痴漢をどう取り締まったらよいかという点で問題を提起していると言えますが、ここでは、純粋に法律的に、この無罪判決の「異例さ」について触れたいと思います。

まず、刑事事件で最高裁に上告するためには、もとの判決が憲法や最高裁判例に違反しているなどの「上告理由」が必要です(刑事訴訟法405条)。

しかし本件では、被告人の大学教授が女性を「触ったか触っていないか」だけが問題で、憲法問題などは含まれていない。だから最高裁としては、上告を棄却して有罪とすることも充分ありえた。

もっとも、上告理由がなくても、一定の事情がある場合は、最高裁はその事件を取り上げて、原判決(もとの判決)を破棄してもよいことになっていて、その事情としては「量刑が著しく不当」だとか、「重大な事実誤認」などが挙げられている(同411条)。

刑事事件では弁護人がよくこれらの事情を主張して上告します。しかしこれらは本来の上告理由でなく、「取り上げてやってもよいけど、取り上げなくてもよい」という程度の事情にすぎない。だからたいていは書面審査だけで棄却される。

ちなみに、最高裁が、「重大な事実誤認」を理由にして原判決を破棄した事件にはどういったものがあるかと、刑事訴訟法のテキストを調べてみますと、二俣事件、八海事件、松川事件など、限られた、しかし著名な冤罪事件が出てきます(それぞれの事件の内容はここで触れませんが、興味があれば「検索」などしてみてください)。

もう一つついでに、データで見ますと、平成5年の数字ですが、刑事上告事件の件数は1年間で計1251件、そのうち書面審査だけで上告棄却されたのが実に958件(約77%)。原判決破棄はわずか1件(0.1%以下)です(その他は上告取下げなど。出典は田宮裕「刑事訴訟法」有斐閣494頁)。

ですから今回の事件も今後、著名な冤罪事件の一つとして、長く記憶されるものと思われます。

他にもいろいろ書きたい「異例さ」を含む事件ですので、その話はまた次回。
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