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大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
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刑事事件の話が続いていますが、今度は「足利事件」という、これまた「冤罪」の可能性が指摘されている事件についてのお話。
DNA鑑定の結果、事件現場に残っていた犯人のDNAと、被告人のそれとが一致しないと判明したらしい。

この事件は、平成2年、足利市で女児が殺害され、容疑者として50代の男性が起訴されたものです。

1審(宇都宮地裁)ではDNA鑑定が行われ、現場に遺留された女児の下着についていた犯人の精液のDNAと、被告人のDNA(毛髪か血液などから取ったのでしょう)が「一致した」として、無期懲役の判決。
2審(東京高裁)そして最高裁もそれを支持して、無期懲役判決が確定(平成12年)。

弁護人は再審請求を申し立てたが、宇都宮地裁は棄却、東京高裁でさらに争われることとなり、東京高裁は改めて鑑定人に鑑定を依頼した。すると今回、DNAが「一致しない」との結果が出た。今後は再審が開かれる可能性が出てきました。

これも、非常に怖い話ではあります。
DNA鑑定だとか、科学的捜査だとか言われると、100%真実がわかるかのような印象を持ってしまいがちですが、その科学技術も所詮人間が作ったものですから、絶対ではありえない。

あとからひっくり返るかも知れない手法なのに、絶対的に正しいかのように扱われ、有罪・無罪を決められるのは非常におそろしい(いちおうフォローしておくと、足利事件判決はDNA鑑定だけを証拠として有罪としたわけでなく、他に証拠もあるのですが、それでも、DNA鑑定が決め手の一つになったのは事実でしょう)。

「指紋」が一致したとかいう話であれば目で見てわかりますが、DNAが一致したといっても、これは細胞の中の染色体の塩基配列が何とかかんとか、そういう話でして、DNA鑑定書なるものを私も見たことがありますが、書いてあることがわからない。

科学技術は日々進歩しているとはいえ、足利事件が起きたのが上記のとおり平成2年、最高裁がその有効性を認めて上告棄却したのが平成12年です。
平成の世に入って行われた鑑定結果なのに、早速ひっくり返される。ならば今ある科学的捜査というものも本当に信用できるのか、といった疑問が当然生じてくるわけです。

かくて科学的捜査の結果というのは、一見信用してしまいがちな部分があるだけに、慎重に懐疑的に扱われる必要があると思います。

たまに、DNA鑑定の発達を理由にして、何十年前の事件でも鑑定すれば真犯人がわかる、だから刑事裁判の時効制度は廃止すべきだ、という主張を聞きますが、その鑑定結果が10年やそこらでひっくり返るわけですから、やはり慎重な姿勢を崩すべきではないと考えます。
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