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大阪市西区・南堀江法律事務所のブログです。
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ダルビッシュの離婚に関して、続き。
 
前回、裁判離婚での慰謝料は、支払う人の収入には関係しないと書きました。
では、ダルビッシュがいくら稼いでいても、離婚の際にサエコが受け取れる金額は一定なのかというと、そうではないです。
 
離婚の際の金銭給付には、慰謝料とは別に「財産分与」というものがあります。これは、結婚後、二人で築いてきた「共有財産」を、離婚に際して二人でわけるというものです。
 
共有財産の簡単な計算方法としては、結婚後、夫婦二人で働いて増えた預金額を足してもらえば良いです。それを2で割ったものが、妻の受け取る財産分与です。専業主婦で夫だけが働いている場合は、夫の預金増加分を2で割って分与します。妻に所得がなくても、「内助の功」を評価するわけです。
 
マイホームを買った場合は、その不動産を時価に換算して共有財産に算入します。ですから、夫が家を取るのであれば、それに見合うだけのお金を妻に分与する必要があります。
やっかいなのはマイホーム購入時にローンを組んでいる場合です。夫婦の住む家として買ったものだから、ローンが夫名義でも、その残額分は共有財産から差し引かれる。
 
ローンがたくさん残っている場合は、差し引くと赤字になることもあります。
この場合、理論上は、赤字の半分を妻が背負わないといけないことになるのですが、実際には、夫が銀行に「離婚したからローンの半分は妻から取ってくれ」と言っても、銀行は了承しないでしょう。
 
ですから、共有財産はゼロとして、妻にローンまでは負わせないかわりに、財産分与はナシとなり、家は夫が取るかわりにローンも払い続ける、となることが多いでしょう。私が扱った事件ではそうなっています。
 
ダルビッシュのサエコに対する財産分与を検討しようとして、一般論に流れてしまいましたが、ダルビッシュの場合は年に何億も稼いでいるから、相当の財産分与になるのは間違いない。
 
しかしここで疑問を感じる向きもあるでしょう。
ダルビッシュは、サエコの内助の功のおかげでプロ野球選手になったわけではない。もともと運動能力が高く、結婚前からプロとして稼いでいた。彼の稼ぎは、サエコが心の支えになっていたことはあるでしょうけど、どちらかといえば彼自身の能力に負うところが大きい。
そういう場合にまで、妻の取り分を当然に「稼ぎの半分」と評価すべきかどうか。
 
裁判例などを見ると、財産分与は必ず半分、とされているわけでもないようで、事案により、2割~5割くらいの幅で決められているようです。夫の収入の中で、何割が妻の寄与によるのか、夫の職業や収入や、妻の果たしてきた役割に応じて判断されるのでしょう。
 
だからダルビッシュの場合も、裁判になれば財産分与は半分でなく20%くらいに下がる可能性もあるでしょうが、それでも相当な金額になるとは思います。
 
次回は養育費の話、次々回は親権の話を書くつもりです。
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先週は尖閣事件の話ばかり書いていましたので、少し目先を変えて、もっと軽い話を書こうということで、ダルビッシュとサエコの離婚騒動について触れます。

私の知っている「芸能情報」は、「おはよう朝日です」(以下「おは朝」)の芸能コーナーが全てなのですが、それによると、ダルビッシュの浮気が原因で離婚騒動になっている、ダルビッシュのほうではサエコにも不満はある(食事を作らないなど)、サエコは慰謝料の支払いを求めているがダルビッシュは拒否している、子供の親権は両方が取りたがっている、といった内容で、ありがちな話ばかりです。

ダルビッシュ夫妻が離婚するかどうかは、特に興味はないのですが、これを素材にして、離婚に関するいくつかの話を書こうと思っています。

「おは朝」では、慰謝料はいくらになるのか、ダルビッシュがメジャーに進出して収入が増えると慰謝料の額も増えるのではないか、といった話もされていましたが、本来、慰謝料は収入に連動するわけではありません。

当ブログでも何度か触れましたが、離婚慰謝料とは、離婚の原因を作った側が、婚姻を破綻させたことのお詫びの意味で払うもので、法的に言えば、相手の精神的苦痛に対する損害賠償にあたります。

損害賠償の金額は、たとえば交通事故や暴行など肉体的苦痛に対するものであれば、ケガの程度に応じてだいたいの基準が決まっています。他人にケガをさせたときの賠償金が、支払う側が金持ちかどうかで変わらないのと同じで、離婚慰謝料もだいたいの相場は決まっていると思ってもらって良いです。

男の浮気が原因であれば、結婚年数、子供がいるかどうか、浮気相手は何人で、どこまでのことをしたのか、などによって金額が決まります。私が経験した裁判では、200万円から500万円くらいです。

ダルビッシュが本当に浮気しているかどうかは知りませんが、そうだとしても、裁判で認められる慰謝料はせいぜい500万円くらいがいいところでしょう。

しかし、実際には、特に芸能人やスポーツ選手などが離婚する際には、もっと多額の、たとえば億単位のお金が支払われることも多いと聞きます。これは何かと言いますと、「協議離婚」だからそういうことができるのです。

裁判離婚ではなくて協議離婚なら、裁判所が介入するわけではないので、慰謝料の相場は関係なくなり、夫婦が合意しさえすれば、慰謝料はゼロでも億でも、いくらでも良い。

お金のある男性なら、長い裁判をするよりは、多少高くても、さっさとお金を払って別れるという選択を取る人が多いのだと思います。この場合、協議が整わなければ裁判、ということになりますが、そうすると上述のような相場が適用され、安くなるでしょう。経済的見地からのみ言えば、受け取る側は、いいところで手を打つことが必要になります。

たまにテレビなどで、あの女優は離婚に際していくら慰謝料を取ったかという、極めて下世話なランキングが発表されたりして、アメリカなどでは何十億ドルの慰謝料をもらっている人もいるようです。

それをうらやましいと見る向きもあるのかもしれませんが、あれは考えてみれば、夫側が、何十億ドルのお金を失う苦痛よりも、その女性と夫婦でいることの苦痛の方が大きいと考えている証左なわけでして、女性にとってみれば非常に不名誉なことなのです。

離婚に関する諸々の話をしばらく続けます。
前回の続き。

小沢一郎が検察審査会の起訴議決に対し、行政訴訟を提起したと書きました。その内容は、「起訴すべきだという議決を取り消せ」ということですが、行政訴訟をするにも時間がかかるので、その判決が下るまでの間に小沢さんは起訴されてしまう。

だから、「取り消せ」という訴えにプラスして、「その裁判の結論が出るまで、起訴議決の効力を凍結させよ」という訴えを起こす必要があります。

これは行政処分に対する「仮の差止め」という手続です。その行政処分が実行されると取り返しのつかない損害が生じるおそれがあるときに、本来の行政訴訟の結論が出るまで、「仮に」行政処分をストップしておくというものです。

18日に東京地裁が却下したのは、この仮差止めのほうです。ですから、小沢さんの起訴そして刑事裁判の動きは今後も粛々と進められていきますが、それと並行して、行政訴訟(起訴議決の取消し)のほうも、審理がされることになるでしょう。

では、そもそも検察審査会の議決に対して、行政訴訟が及ぶのか否か、前回私は疑問であると書きましたが、裁判所はどう言っているか、見てみます。

最高裁は昔、「行政訴訟は及ばない」といったことがあります(昭和41年1月13日判決)。
その理屈は「検察審査会の決議は、国民に直接影響を与えないからだ」ということです。前回書いたとおり、行政訴訟の対象となる行政処分とは、国民に直接不利益を与えるものでないといけないからです。

ただこれは、検察審査会の起訴議決に強制力がなかった(起訴するかどうかはあくまで検察官が決めていた)時代の判例であり、現在の制度を前提にすれば、同じ理屈はあてはまらないと考えることもできます。

他の判例としては、横浜地裁(昭和41年4月6日判決)が「議決の中身まで立ち入った審査はできないが、ちゃんとした手続きのもとで議決が行なわれたか否かは審査できる」と言ったことがあります。手続違反があれば、検察審査会の議決を裁判所が取り消すことができる、ということです。

(たとえば、定数11人の委員のうち3人しか出席していないのに、「11人の出席があって8人が起訴相当と判断しました」などとウソの議事録が作られたときなどは、審査の対象になると言ってよいでしょう)

行政訴訟を起こした小沢さんの弁護士も、当然この判例を知っているはずで、手続違反を主張しているでしょう。

一部の報道によると、議決に立ち会った弁護士が反小沢的だとか、審査会の委員の年齢が不自然に若い(つまり意図的な選任があった)とかいう話もあり、また、詳細は省きますが、起訴議決があった容疑の内容と、検察官が不起訴にした容疑の内容が微妙に食い違うとかいうことも主張しているようです。

小沢さんのことだから徹底的に争うと思われますので、新制度下の検察審査会での議決について、行政訴訟がどこまで及ぶのかという興味深い論点に、最高裁の判断が下されると予想されます。
それはそれとして注目したいですが、本当に無罪を主張するのであれば、本筋の刑事裁判1本で堂々と争えばいいのにな、とも思っています。
厚生労働省の郵便不正疑惑で、村木元局長が無罪判決を受けました。保護責任者遺棄致死の話の続きは後回しにして、やはりこっちの事件に触れます。
 
ただこの事件、内容自体が地味なのと、判決までの経過があまりに異例で、何が問題だったのか、わかりにくい部分もあるかも知れません。
 
それを理解していただこうと思っているのですが、前提として、そもそも刑事裁判において「有罪・無罪」はどのようにして決まるのかについて述べます。
以下の内容を知っていただければ、誰でも裁判官になれます(その後の努力次第で)。
 
有罪・無罪を決めるルールは、大きくまとめると以下のことに尽きます。
ルール1。「被告人を有罪とするには、被告人がその犯行をしたという確かな証拠が必要である」。
ルール2。「証拠とは、物(凶器や死体など)、書類(警察・検察の作った供述調書など)、証言(法廷で証人が話したことなど)と、形は基本的に何でもよい」。
 
簡単なルールのようですが、ただし、以下の制約があります。
ルール3。「被告人自身の自白も証拠に使えるが、自白以外に証拠がない場合は、有罪にできない」。
ルール4。「警察・検察の作った供述調書は、任意の証言でない(つまり強制された)とか、信用性がないなどとして弁護側が異議を唱えた場合は、証拠にしてはいけない」。
 
このルールを使って、いくつかの「練習問題」を掲げてみます。
 
例1。殺人事件で、被告人は「私が殺しました」と自白しているが、死体もあがらず、目撃者の証言もない。この場合、被告人を有罪にできるか。
 
答え。できない。無罪となります。ルール3です。自白だけでは有罪にできない。
 
例2。他殺体が発見され、被告人が「私がやりました」と自白している場合はどうか。
 
答え、有罪にできます。被告人の自白にプラスして、死体という「自白以外」の証拠があるから、ルール3に反しない。
 
ただし、被告人が殺したものなのかどうかは、死体を見ただけでは判明しません。警察や検察が強引に自白させる場合もあります。無実の男性が幼女殺害容疑で無期懲役判決を受けた足利事件のような「冤罪」は、こういうときに生じます。だから自白が信用できるかどうかは、慎重に吟味される必要があります。
 
例3。死体は発見されなかったが、被告人は「私は人を殺しました」と自白していて、目撃者が「この人(被告人)は人を殺してます」と法廷で証言した場合はどうか。
 
答え。有罪にできます。自白にプラスして、証人の証言が証拠となる。
 
例4。死体は発見されず、被告人は「俺はやっていない」と否認したが、目撃者は「この人は殺してます」と証言した場合は。
 
答え。有罪にできます。被告人の自白はないが、証人の証言を証拠にできる。自白だけでは有罪にできなくても、他人の証言だけで有罪にすることはできます。
平成14年に福岡で起きた一家殺人事件(死体はバラバラにして廃棄されたため発見されず、目撃者の証言だけで主犯に死刑判決が出た)は、この類型にあたります。
 
以上、ここまで理解いただければ、誰でも裁判官になれます(その後の努力次第で)。
これを前提として、今回の郵便不正事件で無罪判決が出た理由について、次回書きます。
相撲界のスキャンダラス報道が相次いでいますが、今度は、琴光喜ら力士が野球賭博をやっていたとの報道がありました。
 
賭博は犯罪にあたるというのは、誰でも常識的にご存じかと思います。
 
私が子供のころ、志村けんと仲本工事が競馬のノミ行為(正規の馬券を買わずに賭けをすること)をして、いかりや長介から謹慎処分を命ぜられ、2、3か月ほどの間、いかりや・加藤茶・高木ブーの3人だけで「8時だョ!全員集合」のコントをしていたことがありました。
あの志村けんがテレビから抹殺されるとは、と子供心に衝撃を受け、賭博とはそれほど重大犯罪なんだなと思いました。
 
今回、改めて刑法の条文を見ますと、賭博をした者は50万円以下の罰金、とあり(刑法185条)、懲役刑まではないので、そんなに重い罪ではない。ただし、賭博常習者の場合は3年以下の懲役があります(同186条)。
 
賭博の定義は「偶然の輸贏に財物をかけること」を言います。平成7年に口語化される前の刑法にそう書いていました。「輸贏(ゆえい)」とはまず聞かない言葉ですが、「勝ち負け」を意味します。偶然で勝ち負けが決まることにお金やモノをかけるのが賭博です。
 
将棋やマージャンで賭けをするのは、昔から典型的な賭博とされています。プロ野球も、ある程度は実力勝負とはいえ、運や偶然の要素を排除できないから、賭博の対象になる。
 
ただ、「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」は、賭博にならない(185条)とされています。ゴルフやマージャンで負けたほうが昼ごはんをおごる、といったケースがその典型です。少額で、すぐ消費する程度のものなら、いちいち処罰されません。
 
だから、マージャンに負けて「1000円のランチ」をおごるくらいなら、おそらく問題はないと思うのですが、では「1000円の現金」ならどうか。
 
判例は、現金の場合は少額でも賭博と認める傾向にあります。昔の判例ですが、最高裁(昭和23年10月7日判決)は、花札で300円の賭けをした人に懲役6か月の刑を言い渡しています。
昭和20年ころの300円ですから、今の10倍か20倍は価値があるでしょうし、この人が常習者だったこともあるのでしょうが、お金を賭けることについて裁判所は厳しい姿勢を取るようです。
 
少々のお金であっても、賭けをしただけで、なぜ処罰されるかというと、昔から「国民の健全な経済生活の美風を損ねるからだ」と説明されています。とはいえ、賭博した本人同士が経済的に堕落するのはともかく、他人に迷惑をかけるわけではないので、余程あからさまなケースでない限りは摘発されていないように思われます。
 
今回の力士の野球賭博も、警視庁が直ちに逮捕や家宅捜査に踏み込むわけではなく、まずは相撲協会の自治に委ねる考えなのかも知れません。それが妥当であるようにも思います。
 
もっとも、相撲は神事であり、日本の国技であり、それに携わる力士には日本人としての模範を示してもらわなければなりません。
だから、琴光喜ら力士が野球賭博をしていたという事実は、志村けんが競馬のノミ行為をしていたという以上に、子供たちの心に悪影響を及ぼすでしょう。「健全な経済生活の美風を損ねる」云々より、そちらのほうが懸念されます。
 
相撲協会としては、いかりや長介が志村けんらに下したより厳しい謹慎処分を力士らに科すことで、自浄努力を果たしてほしいです。

(16日追記 志村けんと仲本工事が野球賭博をしていたというのは私の記憶違いで、ウィキペディアによると、競馬のノミ行為のようでしたので、それに基づいて一部訂正します。ノミ行為ですから刑法上の賭博罪でなく、競馬法違反となったようです)
仕事柄か、陰でこっそりうまいことやってる人は叩きたくなるのですが、逆に、叩かれている人は擁護したくなります。
 
先日、当ブログで、法務省所管の社団法人・民事法情報センターの無担保融資について浅い批判を書きましたが、今回は、民主党の事業仕分けでやり玉に挙げられた、同じ法務省所管の財団法人・司法協会を擁護しようとしております。
 
司法協会の業務で私たち弁護士になじみが深いのは、裁判記録の謄写(コピー)業務です。
 
たとえば刑事事件で、検察官が裁判所に提出した証拠をコピーして取り寄せようとする。そのとき、大阪地裁なら地下1階の一画に司法協会の窓口があり、そこでコピーを一式つくってください、と依頼することになります。
 
事業仕分けで問題とされたのは、その際のコピー代が「1枚50円」であるのが高すぎないか、ということです。カラーコピーではなく、白黒でこの値段です。コンビニにいけば1枚10円だから、5倍の値段です。いまどき探せばもっと安いところだってある。
 
高いコピー代は、弁護士が自腹を切ることもありますが、依頼者に請求せざるをえないことも多い。国民の負担になっているわけです。
 
ただ、だからと言って直ちに、この分野に民間を導入して競争させる、というのは、問題でしょう。何せ、扱っているのは訴訟記録です。刑事事件なら、被害者の個人情報や、死体の写真や、わいせつな画像なども、そこに含まれる。
 
そういう記録を、法務省の監督下の法人が扱うのではなく、「入札で一番安いコピー代を提示した民間業者が扱う」と言われれば、不安を感じない人はいないでしょう。
 
だからさすがに民主党も、司法協会の謄写事業を「廃止する」とは言っていなくて、「費用が安くなるように見直せ」と言っているだけです。
 
1枚50円、確かに高いと、私の同業者は誰しも言っています。
もっともそれは、訴訟記録という極めて厳重な管理を要求される資料を、間違いの起こらないように扱いつつ、きれいにコピーし、表紙をつけて製本までする、という手間を考えると、ある程度高くなるのはやむをえないように思えます。
 
私なら「1枚10円にしてやるから自分でコピーしろ」と言われてもやらないでしょう。かかる手間と、負うべき管理責任が大きすぎるので。
 
ということで、司法協会の謄写事業については基本的にはこれでいいのかな、とも思っていますが、同じクオリティを保ちつつ代金が安くなるなら、それに越したことはないので、見直しはどんどんやってもらいたいです。
鳩山総理の元秘書が政治献金規正法違反で起訴された事件で、3月29日、検察側は「禁固2年」の求刑をしました。
今回はごく基本的な話ながら、この「禁固」という刑罰について触れます。
 
(なお条文の上では、禁「錮」という字が使われているのですが、常用漢字でないためか、報道などでは禁「固」とされています。ここでもそれに従います)
 
懲役も禁固も、刑務所に収容されて自由を奪われる刑罰です。
懲役刑は、字面のとおり、懲役は「懲らしめのための労役」が科せられ、刑務所内の作業場で一定の仕事をやらされます。懲らしめとはいえ、実際にはその作業を通じて手に職をつけて、ちゃんと社会復帰してもらうという目的もあります。
 
一方、禁固刑は、刑務所に収容されるものの、労役がないため、働かなくてよい。
なぜ労役がないかというと、これには政治的意味があります。
 
昔風の説明をしますと、犯罪には大きくわけて「破廉恥罪」と「非破廉恥罪」があります。
「破廉恥」(はれんち)と言われると「ハレンチ学園」なんかを思い出してしまって、「わいせつ系」の犯罪だと思いがちですが、もともと「破廉恥」とは人倫や道徳に反することを意味するのであって、わいせつ系に限らず窃盗や暴行傷害などの犯罪を広く含みます。
 
「非破廉恥罪」とは、破廉恥でない、名誉犯的な意味を帯びます。政治犯罪の多くはこっちに該当するとされています。
 
政治犯の典型として、(近年はまず耳にしませんが)国家の転覆を図る「内乱罪」(刑法77条)というのがあります。この条文には、死刑や禁固刑が定められていますが、懲役刑はない。
これは、個人の利得や快楽を目的としたのでなく、その人なりに国家・社会をより良くしようと考えてした行為ということで、犯人とはいえ名誉を重んじ、「懲らしめのための労役」はさせないという趣旨です。
 
(時代劇でも、盗賊などは斬首されますが、敵方の武将は名誉を重んじて自ら切腹させます。そういう処遇の違いは、日本に限らず昔からあるようです)
 
もっとも、現行の日本刑法は、名誉犯ばかりでなく、「犯情が悪質でないので懲役させるほどでない」犯罪にも禁固刑を定めます。
たとえば故意の殺人は死刑か懲役刑ですが、業務上過失致死(故意でなく過失で死なせた)であれば、懲役刑、禁固刑、罰金から選択することになっています。
 
ちなみに、刑務所にいながら働かなくてよいというのは、それはそれで時間を持て余すと想像されます。そのため、禁固刑の人でも労役を申し出れば作業に就くことは可能で、その申出をする人がけっこう多い、と聞いたことがあります。
 
鳩山総理の元秘書が起訴された政治資金規正法は、刑罰として禁固刑か罰金を定めており、ざっと見たところ懲役刑はないようです。これは、政治犯として名誉を重んじる趣旨か、犯情が悪質でないと考えたためか、私は存じません。
しかし何より、この一件でもっとも破廉恥なのは、秘書が起訴されても「知らなかった」としか説明しない鳩山総理であるように思えます。
当ブログでは基本的に芸能ネタは取り扱いませんが、面白かったので触れてみます。
テレビの芸能ニュースで見たのですが、ナントカいう女優が、日本の芸能事務所をクビになり、今度、スペインに個人事務所を作って芸能活動を再開させるのだそうです。
 
その女優に取材するためには、事前に「同意書」にサインを求められる。その同意書には、誹謗中傷を書かないこと、もし書いたらスペインの裁判所で裁判すること、などが掲げられているらしい。
この笑わせてくれる同意書について、法的に有効なのか否か、検討します。
 
まず、誹謗中傷を書かないという点。ここは、効力があるともないとも言える。
もともと、他人に対し誹謗中傷を行うと、名誉毀損となって民事上も賠償責任を負うし、刑法上も犯罪になる。
だから、この女優に限らず、人さまを誹謗中傷してはいけないというのは、法律で定められているためであって、同意書にサインするゆえではないのです。
 
また、何をもって名誉毀損となるかは、言われた本人(女優)が決めるのではなく、裁判所が社会通念にのっとって決める。ですから、同意書にサインしたところで、公正な報道や批評の範囲であれば、違法となるわけではない。
 
次に、スペインの裁判所にて裁判するという点。これには効力があります。
互いに遠隔地にいる当事者が取引するとき、何か問題が起こったときには裁判所をどこにするかということは、事前に合意で決めておくことができる。これを合意管轄といいます。
日本の出版社とスペインの芸能事務所が国際的な契約をする際に、その一方の国の裁判所を合意管轄で決めておくことも認められる。
 
では、その女優の気に触る報道をしてしまったら、スペインの裁判所に行かないといけないのかというと、必ずしもそうではありません。
日本にも「主権」というものがある以上、スペイン国内で出された判決が、日本国内で当然に通用するわけではないからです。
 
仮にスペインの裁判所が日本の出版社に「賠償金を1000万円払いなさい」と命じたところで、日本国内では強制執行できないので、取り立てることもできない。
外国の判決が日本国内で通用するためには、日本の裁判所での「承認」という手続きが必要なのです。
 
だから、スペインの裁判所から訴状が送られてきても放っておいて、日本の裁判所での承認の際に出ていけばよい、ということになります。
 
日本の裁判所での承認がない場合、スペイン国内では判決が通用しますが、それで困る日本人はほとんどいないでしょう(スペインに不動産や預金を持っていると差し押えられるかも知れませんが、それほどのお金持ちなら弁護士に頼んで何とかできるでしょう。また、スペインに旅行することは自由にできます。)
 
それに何より、そもそもスペインだって日本と同じ立憲国家ですから、女優がどんな裁判を起こそうと、表現の自由を無視したような無茶な判決は出さないはずです。
 
ということで、この女優の今後の活動には興味ないのですが、スペインの裁判所で裁判を起こしてくれたら面白いなと、そこだけは非常に興味があります。
お知らせ
一時的に戻ってきました。 左上に「裏入口」という小窓が出てくるかも知れませんが、当ブログとは関係ありません。おそらくアダルトサイトへの入口なので、クリックしないでください。
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